Tennis match No.17 ページ18
─ Nobody's side ─
Aは既に体力が限界まで迫っていた。彼女は朱雀を放った後、膝から崩れ落ちる。平等院を追い越した点数やゲーム数を持っていたにも関わらず、立ち上がる事ができるだけの力はもうその身体にほとんど残っていなかった。
サーブ権は平等院へと渡る。良しとした彼は容赦無く鋭いサーブを放つ。今の彼女に打ち返す力が無い事は一目瞭然だというのに、平等院の信条は堅い。誰もが視線を奪われたその試合は、もうテニスの試合というには殺伐とし過ぎていたのだ。
「…っく…！」
入江はもう我慢ならないといった様子で走り出した。大した距離は無い場所からの走りで彼女の前に躍り出てから、Aのラケットを手に平等院のサーブを打ち返す。得点などの意味では無く、こればかりは人を守るだけの簡単な理由だったのである。すっかりと気が動転したのか、Aは意気消沈した様に地面へと座り込んでしまう。ゆっくりと日差しが消え始めていた空には暗い雲が増え、やがて密やかで冷たい雨が降る。
「…それはテニスじゃないよ」
一言だけ、呟く様にして入江は平等院へ告げる。そして振り返って屈み込む彼は純粋にAを心配している様子。掛けられた声は、彼女にとっては雑音の一つになってしまったみたく素通りして反応を返す事は無い。意識の混濁が無くなる頃に、入江の背を目掛けてまたも平等院のサーブは放たれた。
「……っ、ああ…！」
思わず落ちるAの声は鋭く、入江の掌に収まる自らのラケットを自らの手元に引き寄せて瞬時に立ち上がった。少し遅れて立ち上がった入江が振り向いた時には迫るボール、彼の絞られてしまった喉からは何も声が出ない。瞬時に理解したのはこのままではまずいという事だが彼自身に防ぐ事はもう不可能だ。
「平等院、鳳凰…！」
入江の耳元で聞こえたAの声は芯が通っていて、目の前には彼女が構えたラケットと、溶けて滲んだガットの傷付いた具合。そして、入江の肩を僅かに後ろへ押してラケットとの間に入り込んだAは無理矢理にガットと手首に負担を掛けて返球を仕掛ける。その仕掛けられたものは回転無しで真っ直ぐに平等院のラケットのガットを狙う。
「三の形型、玄武…！」
─────
玄武
相手のガットを狙い、一度はわざと返球させる。そして返ってきたボールをもう一度ガットへと向けて返球し、ガット自体を突き破る技。手首に負担は掛かるが威力は数個ある技の中で最も絶大。
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唯(プロフ) - 初コメント失礼します....! 入江奏多先輩好きなので、思わず舞い上がりました！ 素敵な作品をありがとうございます(*^^*) 長文失礼しましたorz (2018年1月19日 19時) (
レス) id: f51638b8bc (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 原哲也(ハラテツ)の小説も書いて欲しいです (2017年12月7日 22時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月7日 22時
