中原の覇王 part6 (ページ9)

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215話ページ9

そんなある時、趙高はAに甘言を流す

高「自らの身の安全を保つにはどうすべきかよくお考え下さい。そ、それに天下を定めたのは、まさしく相国の功績であり、嫡系が継ぐのは古今の習わしでもあります。陛下が崩御し、その埋葬が済み次第、太子を廃立して代わって帝になられるのが宜しいかと思います。相国が自ら尊位に即くことで、この中華に無窮の幸福をもたらすことになりましょう」

『お前は昼間から酔っているのか？何たわけた事をぬかす！私とお前は、陛下より寵愛を受けているというのに、どうしてそのような議論をする！？』

高「そ、それは相国の為に…」

『何が私の為だ！全て貴様の私利私欲だろうが！！…本来なら有無を言わさずに殺す所だが、お前は陛下の信頼があり、命だけは勘弁してやる』

Aが凄まじい怒号を放つ

『とっとと私の前から消えろ！！この汚らわしい宦官めが！陛下がお隠れになれば、覚悟しておけ！！』

高「ひっ！ひーー！！！」

趙高は怯えて逃亡した

この日以降、Aは宦官を虐待するようになる

かつてない屈辱と恐怖を味わった趙高は、Aを憎悪し、同じくAを憎む李斯と組むようになる

ある時、李斯が政へ言った

斯「相国は、群臣の中でもずば抜けて勇敢で軍略に富んでおります。その上彼女は、陛下以外の全ての者を蔑視しております。加えて凶悪残忍な性格で、長いこと大軍を指揮して、秦軍内には奴の崇拝者も多々おり、彼女の威名は国の内外に鳴り響いております」

政「…」

斯「彼女の娘の拓跋儀、拓跋遵も長じており、今では中華屈指の将軍です。拓跋珪に至っては、大陸の西半分を平定するなど、その功績は母親に匹敵する怪物なのです！彼女達が謀反を起こさないのは、陛下なればこそ…太子ではとても彼女達を御しきれますまい。どうか奴等、拓跋一族を早目に処分して、後の憂いを絶ち切って下さい！」

すると政は言う

政「天下は未だ多難である。だから、まだ若い扶蘇には強力な補弼が必要なのだ。Aは我等が一族にして、秦の嫡系であり、中華統一はAが成し遂げたと言ってもよい！そのような者には、伊尹・周公旦のような大任を与えなければならない！」

斯「へ、陛下…」

政「それを何だ、卿の言い分は！お前は、帝舅の権力を与えられるかどうか心配なのだろうが、そんな下らぬ事を案じるな。朕はお前も遺命に預からせるつもりだ」

聞き入れる素振りを全く見せない政の言葉に、李斯は涙を零した