中原の覇王 part6 (ページ8)

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214話ページ8

珪「陛下、私に何かご用で？」

政「珪よ。お前の跡継ぎは誰にするつもりだ？」

珪「跡継ぎですか？それでしたら、紹のつもりですが…」

拓跋珪は自身の後継には、長男の拓跋紹を据えるつもりだったが、政が拓跋珪に言う

政「…珪よ。俺はお前の事を、本当の息子の様に思っている。この言葉は、父の言葉と思って聞くように。…紹を殺しなさい。俺は過酷な環境を生き、それ故に人の内面は誰よりも理解しているつもりだ。紹の姿は虎や熊のようで、声は山犬や狼のようだ。きっとお前達一族に害をなすだろう…信じてくれ。珪よ」

珪「そんな…例え、あの子が災いをもたらす子だとしても…私は父親です。我が子を殺すことなんて…出来ません！」

政「…そうか。お前の跡継ぎだが、嗣には神気があり、紹とは比較にならない。この子を嫡男に立てよ。文王が伯邑考を廃して、武王を立てた意をよく考えるのだ」

拓跋珪は、政のこの言葉にも反対する

珪「私が独立国の王でしたら、それもアリでしょう。ですが私や、昔の母上は属国の王に過ぎません。私の藩国では、先祖を祀る事さえ出来れば世継ぎとして十分です。わざわざ長幼の倫を乱す気はありません」

政「お前の功績は天地に並び、藩国は100城を兼ねている。まさしく当世の太師といえる存在であり、専征の任を授けられた存在でもある！お前の子孫は諸藩国と同じではない。紹ではこれからの世を渡っていく事は出来ない。お前の憂いを取り除くために、紹を別に一国を封じよう」

政は拓跋紹を陸繋島に封じ、半ば強引に拓跋珪の後継を拓跋嗣とした

人を見る目に誰よりも優れた政の期待通りに、拓跋嗣は成長するとますます壮健になり、身長は七尺五寸となって騎馬や射術を習得した

扶蘇は文章が巧く、儒教を貴ぶ人間だったので、政は李斯へ愚痴をこぼした

政「儒教など女々しくて、帝王には相応しくないぞ」
　
斯「周の武王は馬上で天下を取りましたが、成王が文を貴んで盤石の礎を作ったのです。聖人が天下を統一した後には、必ず穏和な者がこれを継ぎ、残虐な風潮を改め、殺伐とした世の中を終わらせる…それが天の道でございます」

政は大いに喜び、そこで李斯は言葉を続ける

斯「太子は仁孝温恭なお人柄ですが、相国の拓跋Aは戦に強く、偽りが多い人間です。陛下の後は、社稷が太子の者でなくなることを恐れます。どうか拓跋Aの権力を奪い、太子には早めに朝政へ参与なさせますよう」

政は心で頷きながらも、実践ができなかった