中原の覇王 part6 (ページ12)

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218話ページ12

中華を統一して、やりたいことは何でもやった政だが、大陸の大部分は押さえたとは言え、ローマだけは相変わらず秦に敵対し続けている

政はローマを経済的に孤立させて、息の根を止めることが効果的と考えた

かくしてローマを封鎖して兵糧攻めにしようと、政は大陸封鎖令を発令したのであった

しかしこの命令にカルタゴとアラビアのサバア王国は従わなかった

カルタゴとサバア王国は政に悉く歯向かっていたのだ

その侮辱とも取れる態度は、誇り高い政の心を傷つけた

政「朕の命令に背くとは…こしゃくなカルタゴにサバアめ！思い知らしてやる…大軍で叩きのめしてくれよう！」

こうして地中海世界とアラビア遠征の計画がなされた

かくして、ユーラシア中から兵力が集められた

中華や北方の地などからかき集められた兵力…その数、実に100万を下らぬ巨大な軍勢になった

これは前3世紀当時、地上で考えられる最大にして最強の軍団だった

政は、この巨大な兵力を怒濤のごとくローマやカルタゴ、サバア王国になだれ込ませ、カルタゴやローマ等を一挙に粉砕してしまおうと考えた

最後通牒をも無視したカルタゴに堪忍袋の尾が切れた政は、ここに大遠征の開始を命令する

政「朕の平和の願いを袖にするとは…屈辱には血の洗礼でつぐなわせてやる」

時に前212年…大遠征は始まった

実は、政がこの遠征を行ったのは理由があった

英傑につきものの後継者問題…政自身、高い能力を持っていたので、その死後に権力バランスが崩れる可能性は非常に高かった

政がいなくなると、たった一人の人物が突出してしまうのである

奴れいから這い上がって活躍…周りとは次元が違う程の桁違いな軍事能力と圧倒的な実績を持ち、秦朝建国の元勲としてのポジションを持っている

秦の嘗ての嫡系で、全ての戦国七雄及び、夏·殷·周の王族の血筋を持ち、名実共に秦を継げる存在…それがAであった

宗族のトップで政の族姉のAの軍権が、余りにも強すぎるのである

だから政の死後を考えた時、確実性を取りたいのであれば、政は自分の子孫のために、Aを殺すべきだった

実はもう、Aの高い軍事能力は必要がなかった

それよりも国を確実に治める事こそが、秦の戦略だった

政は分かっていた。もうAは必要がなかった

所謂…"狡兎死して走狗烹らる"である

しかし政は出来なかった

ここが呂不韋の言っていた、政の甘さであった

Aはこの遠征に反対しており、出征出来なかったのだ