二人分の見えない過去 ページ29
突拍子もなくそんなことを言い出した理由を、嫌でも知ることになる。
大木に寄りかかっていたはずの影がのしりと地面に倒れ込んだ。白い目を剥き出しに、口は広げたままだった。
テンテンが駆け寄った人も、ネジが見つめていた人も。
「たった一人、ただ一人だけだ。任務を果たせず、仲間も失った。一体俺が何をしたって言うんだ。こんな汚点を背負って無駄に生き延びろだなんて」
先の言葉を再び繰り返し、その人は俯いた。
どれだけ辛いことか、どれだけ耐え難いことか。かつては眉間に皺を刻み威厳に満ちていた顔が、今となっては憔悴しきっている。
(解放してあげたい。……だからって手を下せる訳がない)
きっとテンテンも同じことを考えているのだと思う。私達は何も出来ずにいた。
さて、彼は。
ちらりと視線をやってみたけれど、長髪が掛かっていて表情は伺えなかった。この時、見過ごしていた違和感を、私は後になって後悔することになるのだった。
「お前もこの負け犬達のように成り下がりたいのか」
彼はあろうことかたった一人の生存者に、そんな言葉を吐いたのだ。
「負け犬だと？」
「任務を果たせず、身一つすら守れなかったコイツらになんの価値があるというのだ」
「ちょっとネジ、言い過ぎよ」
堪らず言い返す。テンテンが諌めようとしても彼らの熱は治まらない。
「このっクソガキ……！」
無理もない。立ち上がり掴み掛かろうとしたその人。
いても経ってもいられなくなった。私はそれを邪魔するように間に入り込み、ネジの頬に手の平を翳した。
「誰かの為に自分の命を賭けられた人のことを、何者でもないあなたが評価する資格なんかない」
乾いた音が響く。
「"何者でもない"……？」
ネジは一瞬だけ目を見開いたかと思われたが、やはり読めない顔をしてパッと視線を逸らした。
向かいに居るテンテンの不安げなそれと目があった時、私は自分の言動を省みた。
もっと上手な方法があったはずだ。感情的になってしまったのは、それも手を上げてしまったのは、決して良い選択とは言えないだろう。
しかし、少なからず正せたものがあるのだとは信じたい。
「……なんて、格好の付かねぇこと言っちまったな。悪い、動揺してた」
と、その人の口から苦笑混じりの声を聞いた。
悲しみの色が消せない微笑みでも、乗り越える強さが確かに混在していた。
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かにかま(プロフ) - マニ。さん» コメントありがとうございます^^ 折角声を掛けていただいたのに申し訳ないのですが、機械に弱いのでやめておこうかな…と思います。すみません; (11月6日 18時) (
レス) id: a48c4b505b (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - ✉️。こんにちは、とても面白いです！これからも頑張ってください、あのもしよければボードで会話したいのですが不可能じゃなければでいいです！ (10月8日 15時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - こめおさん» ありがとうございます。頑張ります^^ (9月25日 0時) (レス) id: a48c4b505b (このIDを非表示/違反報告)
こめお(プロフ) - ずっと待ってましたありがとうございます！！！！本当に嬉しいです！無理せず頑張ってください！！引き続き応援します！！ (9月23日 9時) (レス) id: 121e674881 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - こめおさん» コメントありがとうございます。そう言って頂けてとても嬉しいです！こちらこそ長らくお待たせしてしまいすみません;; 引き続き気紛れな更新になるかと思いますが、良かったらたまに覗きに来てくださいね^^ (9月23日 3時) (レス) id: a48c4b505b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かにかま | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a061/
作成日時：2022年7月3日 18時
