涙のアスターⅡ【あんスタ】 (ページ7)

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＃5　家族写真ページ7

◈真緒side◈

俺はふとリビングを見渡す。

紫月の家に入った時から、少し気になっていた。

綺麗に掃除されているけど、物も少なくて…なんとなく寂しい感じ。

真緒「(…あれは…写真立て…？)」

テレビの横にある棚には、なぜか伏せられた写真立てがあった。

中にはどんな写真が入っているんだろう。

気にはなるけど、勝手に触るのは悪いと思った。

紫月「…どうかした。」

真緒「あ、えっと……あの棚の上…」

紫月「…見る？」

俺が返答に困っていると、紫月は何も言わず伏せられた写真立てを手に取った。

紫月「…思い出。」

そう言って渡された写真を見てみると…。

真緒「…家族写真？」

紫月「…うん。」

満面の笑顔を浮かべた幼い紫月と、幸せそうに微笑む紫月のお父さんとお母さん。

本当に幸せそうで、素敵な写真だった。

でも、紫月の親はもう…。

真緒「…見せてくれてありがとな。それと、嫌なこと思い出させた…よな、ごめん。」

紫月「…平気。私も久しぶりに見れて、よかった。」

改めて写真をよく見る。

紫月のお母さんはすごく綺麗な人で、紫色の髪も母親譲りなんだろう。

幼い紫月の笑顔はお父さんに似ていた。

紫月「…今度、会いに行く。」

真緒「え？」

紫月「…お墓参り。ずっと、行けなかったから…」

真緒「そっか…きっと、紫月のお母さんたちも会いたがってると思う。」

だってこの写真からは、紫月を大切にしていた気持ちが溢れるくらい伝わってくる。

事故の時、紫月を守ったことだって…。

真緒「…あのさ。」

紫月「…？」

真緒「俺も、一緒に行ってもいいか？」

紫月は一瞬驚いたけど、すぐに頷いた。

紫月「…いいの？」

真緒「あ〜…逆にお邪魔になるかもしれないけど…」

紫月「ううん…いてくれると、嬉しい。」

紫月は寂しそうに笑う。

俺はそんな紫月の傍にいたかった。

真緒「(今は、紫月をひとりにしたくない…)」

『＿なかないで＿』

……あれ。

前にも、同じようなことがあった気がする。

『＿おれがそばにいる！だから…＿』

写真の中の幼い紫月を見ていると、胸がざわついた。

真緒「(…なんだっけ…思い出せない…)」

思うように掴めないまま、微かな記憶はすぐに消えてしまった。

…何か、大切なことを忘れている気がする。

紫月「真緒くん…？」

真緒「あ…ごめん、大丈夫。」

紫月「…そう。」

こうして俺は、紫月の両親のお墓参りに付き添うことになった。