＃19 知らなかったこと ページ21
◈紫月side◈
『…どこまでなら、していい？』
彼の言葉が頭の中で何度も再生される。
あの時の真緒くんはいつもと雰囲気が違った。
熱っぽいような、焦るような…そんな瞳で見つめられて、
なぜか私も熱に浮かされたみたいに落ち着かなかった。
紫月「(…これで隠れた…)」
誕生日に貰ったチョーカーを付けて、
首筋の赤くなったところを隠す。
紫月「(…私が何も知らないせいで、
真緒くんに迷惑かけたのかも…)」
この首筋の痕も、調べて初めて知ったくらいで。
愛情表現にはハグとかキス以外もある。
そんなことも知らない自分が無知すぎて…。
きっと「一緒に住む」なんて
簡単に言っちゃダメだったんだ。
紫月「(…知識だけでも身につけなきゃ)」
仕事の合間にスマホで軽く調べてみた。
真緒くんがしたのはキスマーク。
独占欲、嫉妬心、付ける理由も色々ある。
そして調べるほど恥ずかしい気持ちになっていく。
自分の知らない世界が一気に広がった気がした。
紫月「(…キスも、軽いものと深いものがあるんだ。
それに、これは……)」
おそらく恋人同士の愛情表現で一番深い、
お互いの身体を重ねる行為。
映像を見たわけじゃないから、
文字だけでは難しくてよく分からない。
だけど……いつか私も、真緒くんと
こういうことをする日が来るのかもしれない。
紫月「(…帰ったら、真緒くんに謝ろう…)」
同居生活2日目、夜。
いざ2人きりになると、
昨日のこともあって口数も少なくなってしまう。
お風呂も入って、あとは寝るだけ。
話すタイミングはもうここしかない。
紫月「…真緒くん」
真緒「ん、どうした？」
紫月「…一緒に住もうなんて言って、ごめん…」
調べて分かった。
男女では色々考えなきゃいけないことがあるって。
紫月「簡単に言っちゃダメだった…と思う。
真緒くんの言葉の意味も、全然分かってなかった…」
真緒「紫月…」
紫月「だから、ごめん…」
もし真緒くんが嫌なら、無理にここにいなくても…。
真緒「…紫月」
紫月「……？」
真緒「俺の方こそ、昨日はごめん」
ぎゅっと手を握ってお互いの気持ちを伝え合う。
真緒「浮かれてたんだ、紫月と一緒に過ごせるって。
嬉しくて…だから、欲が出たっていうか…」
真緒くんは私の首筋の痕にそっと触れる。
真緒「これ、時間が経てば消えるから」
紫月「うん…」
ただ、色々知った後でも
私の気持ちは変わらなかった。
この痕も、別に嫌じゃないって。
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作者名：紫鶴 | 作成日時：2021年8月4日 15時
