赤い人と私【レッド】Second

29日目 ページ9

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「チャンピオンリーグで、僕より先にチャンピオンになったグリーンと戦って、勝って、そしたら僕は頂点になった。…なってしまった」

ふと思い出す、山頂で吹雪に吹かれていた赤のことを
初めて会った時からそんなに経っていない筈なのに今では随分と変わったように思う

「突然、そこで僕の旅は終わったんだ。…ずっと追い続けていた夢を掴んだら道はそこで途切れた。走り続けていた反動からか何をしたらいいのか、自分は何をしたいのか、よく、分からなくなった」

缶を持つ手に力が入る

「夢の先を考えていなかったんだ。チャンピオンになってどうするのか、どうしたいのか。……僕は、頂点の景色から逃げたんだ」

間を置いてミックスオレを一口飲むと再び話し始める

「…頂点から逃げたら、今度はロケット団を倒した英雄の影が付いて回った」
「！」

レッドは缶から目を離し顔を上げてその目にはここじゃない遠くが映っているのかもしれない

「僕の知らない人がみんな自分のことを知っている。服装が目立つから変えようと思ったこともあるけど、母さんがくれたものだから変えたくなくて、ずっとこのままだった。…逃げたいなら変な意地張らずに全部変わってしまえば良かったのに」

最後の一言は私に聴かせるというよりも自分自身に言っているように感じた

「…レッドは変わりたくなかったんじゃないかな」
「？」
「グリーンとか貴方のお母さんとかレッドのこと色眼鏡で見ない人のためにさ、自分はこういう人間なんだ、って貫き通したかったんじゃない？そのために一先ず、人がいない場所に居たかった。それがシロガネヤマだったんだよ」

今度は私から目線を合わせて微笑むとレッドは目を少し見開き、

「そう、かもね」

これまた本当に僅かに口角が上がって見えた

「…なんか、励まそうと思ったのに難しいな…」
「そんなことないよ、道が少し見えた気がする。ありがとう」
「…なら、いいけど…じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ」

レッドを見送り扉を閉めると一つ伸びをして再びビデオを回し始めた

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