透明オルタナティブ【呪術廻戦】 (ページ46)

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メガネや目隠しは、呪術師ならつけている人が多いことを教えてもらった。

呪霊が見られている、と感じると襲ってくる場合があるんだとか。

そういや夜蛾学長もつけてた。伊地知さんもそうなのかな。

帰り道。

歩いて帰りたい気分、なんて先生が言うからそれに付き合う。

「……素顔は見せてくれないんですか」

「企業秘密だからね」

また流される。

やっぱり、見せる気はないみたい。

街灯の少ない道。

東京とは思えない人の少なさ。

あるのは、2人の足音だけ。

「それで？」

「……え？」

「何に悩んでるの」

あぁ、やっぱりこの人には適わない。

この人には隠せない。

「……今日の実習は、3級程度と聞いてました。けど、途中から出てきたのは準一級」

「私の前には、なぜか強い呪霊が現れるんです」

今日は勝てた。

今日は祓えた。

「あぁ、死ぬときって呪霊殺されるんだなって思いました」

「そういう感情がずっと心の中に渦巻いて」

夜蛾学長には啖呵切ってたけれど、いざ場に立つと怖くて。

意志とか勇気だなんて、口だけで、何一つ持っていなかった。

「今日、死ぬって思ったとき怖かった？」

「はい……この先、もっと強い呪霊がイレギュラーに発生したとき、私は死ぬだろうって思いました」

立ち止まる。

響いていた足音が止まる。

夜の静けさに呑み込まれそうになる。

呪いによる被害を減らしたいと思った。

人を助けたいって思ってた。

私がやるしかないと思っていたのに。

私が死ぬのを怖がっている。

唇を噛み締める。

手を固く握りしめる。

私の視界に自分以外の足が入る。

つまり、五条先生が近付いてきたわけで。

顔を上げると、五条先生の顔。

サングラス越しに目が合う。

サングラスの奥の目が私を掴んで離さない。

喉が、ひゅっとなる。

「大丈夫、死なないよ」

「僕が死なせない」

どこかのプリンセス映画の真似だろうか。

五条先生が王子様。

膝まずき、私の片手をそっと取る。

手の甲にキスをする真似。

そう、真似だけ。

「死んでもお守り致しますよ、お嬢さん？」

その瞬間。

私の記憶の中で、誰かと五条先生が重なった。

心臓がキュッと摘まれた感覚。

私の記憶が、揺れた気がした。

そして、それとは別に。

この日、この瞬間。

五条先生に心を掴まれた(落ちた)。

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