この世界の片隅に4【土方十四郎】 (ページ23)

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百七十三ページ23

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神楽ちゃんに腕を引っ張られて久しぶりに江戸の町に足を踏み入れた。

世間はクリスマスムード一色になっていた。
キラキラと光る電飾に何処からか聞こえてくるジングルベルの音楽。
店頭にはサンタの服を着た人々。

ひと月ちょっと屋敷から出なかっただけでこんなにも変わるのかと。

…にしても天人に侵食されたなぁなんて思った。

「A！チキン買うアル！」

『ちょ、そんな引っ張らないで！』

「俺ァ甘いもん食えりゃなんでもいーわ」

「アンタらそろそろ遠慮ってもんを覚えろォォオ‼」

いつもなら響くであろう新八くんのツッコミもクリスマスイブという今日のこの雰囲気の中では掻き消された。

心なしか新八くんが少し悲しそう。…え？なんで悲しそうなの。いつも突っ込むの怠がってるのになんで今日はそんな顔してんの、え、意味わかんない。

…ああやっぱ自分の中でツッコミキャラだと自覚してるのか。

「自覚せざる得ないよね！この二人に挟まれてたらツッコミキャラだと自覚するしかないよね‼」

『…あのさぁ、心の中読むのやめてよ、気持ち悪い』

「気持ち悪いってなんなんだよ‼僕がつっこまなかったらモヤっとして終わるのアンタですからね‼」

「A、許すアル。新八はツッコミしか脳がないネ。心の声を読むのも無意識アル」

「そーだそーだ。眼鏡とツッコミ、それでこそ新八だからなァ」

「アンタら僕をなんだと思ってんだァァァア‼」

店先でギャアギャアと煩い。
でも止める気にもならなくて精肉店のおばちゃんからチキンを受け取ると、遠くから黒がこちらに歩いてきてる。

確認しなくても分かる、彼らだ。