太芥『チョコレート』 ページ34
◆
太宰さんが今日中にチョコレートを作ってこいのこと。
【チョコ】
「はァ?チョコ作りを教えてほしい?」
英新聞を読んでいるところ申し訳ないです、と頭を下げれば別にいいと頭をぽんぽんされた。
「まぁいいけど…作って如何すんだよ」
「太宰さんにあげます」
「ぶっ!!」
飲んでいた珈琲を喉に詰まらせたのか激しく咳き込んだ中原さん。声をかけるも、「新手の嫌がらせか?」なんて呟くので咄嗟に謝罪すると中原さんは頭を抱えた。
「基本的な作り方は教えてやるが…」
「はい」
「どんなことがあっても太宰の前で俺の名前を出すなよ」
「……善処します」
*
出来たのはごく普通の手作りチョコ。中原さんがなかなか良い出来だと誉めてくれたが、一番大切なのは太宰さんが喜んでくれるかどうか。
もちろん作っている時はずっと太宰さんのことを考えていた。喜んでくれるだろうか、それとも不味いと言うだろうか。どちらにせよ可能性が高いのは後者であろう。
「太宰さんの所に行ってきます」
「おう。俺の名前は出すなよ」
少々不安もあるが、これもまた任務の一貫。そう思えば執務室への足取りは少し軽くなったような気がした。
「失礼します、太宰さん」
しかし返答がないため、居ないのかと少し扉を開けると、机に伏せて寝る太宰さんの姿があった。
風邪を召されます、そんな所で寝ていては。と、喉まで押し寄せていた言葉を押し殺す。
だが机の上に包装したチョコを置いて部屋を出ようとした時だった。
「何、もう帰るの」
太宰さんが此方を詰まらなそうに見てきた。
すると置いていたチョコの包装を取り、ぱくりと1つ食べてしまう。
「……不味い」
そして案の定の答え。嗚呼、喜んでもらえるなんて夢のまた夢。
「すみませんでした…次は…」
「中也の持っているチョコの味だ。芥川君、中也にチョコ作りを教えてもらったろう、気にくわないな」
鋭い眼光に身震いする。其処までお見通しなのか、と他人事のように思っていると腕を引っ張られていつの間にか太宰さんの膝の上に。
「ほら、君も食べてみなよ」
そう言ってまたチョコを取り出すと自分の口に放り込み、そのまま僕の口へとチョコを流し込んできた。舌が入ってきて苦しい。
「ね?不味いでしょう?」
唇が離れても口の中にはまだ甘さが広がっていた。
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エリカ - リクエストいいですか?ドス芥お願いします!できればドストさんがヤンデレな感じのを… (2017年6月10日 18時) (レス) id: e5d2f5896d (このIDを非表示/違反報告)
福地さん(プロフ) - ああああああ!同志がいたっ!なんという幸せ!太芥いいですよね!!!文ストの中で一番好きなcpです!やつがれちゃんの儚い感じがすごい好き!!幸せになって欲しいっ!そして、表ではやつがれちゃんに厳しくしてるけど裏ではやつがれちゃんの事褒めてる太宰さん…好き (2017年4月5日 22時) (レス) id: 4a35111a88 (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - 桐宮さん» 二重人格好きです。続編にいったので是非…(^^) (2017年2月21日 22時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
桐宮 - 俺も異常だね。本当に好き。がれちゃん二重人格いい。 (2017年2月21日 22時) (レス) id: a7d473c89c (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - kiiroitoriさん» 同類ですね。わたくしも馬鹿みたいに騒いでドタバタしてますよ(超迷惑) (2017年2月21日 21時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なかゞわとまと | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TOMOTO/
作成日時:2017年1月15日 23時