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女将 「A、本日も左衛門殿がいらっしゃるのだから
しっかり支度いたしんす」
貴方 「わかりました」
女将に言われていつも着る菫色の着物を着る
少し質素な色をしているものの
どこか華やかで優雅なこの着物は着心地が良く落ち着く
左衛門 「Aよ、今日も美しいね
さぁ、今日もよろしく頼むよ」
貴方 「左衛門様、ようこそおいでくんなまんし
ご冗談をいいなんすな
今宵もお楽しみいたしんしょう」
私はこの夜が嫌いだ
自分の知らない自分を演じて
私の大嫌いな場所で出会った
よくわからないものと一夜も戯れるのだ
きっと心は禿になったばかりの時より
酷く汚れてしまっただろう
・
左衛門 「楽しかったよ、それでは」
貴方 「ふふふ、わっちもでありんす
またおいでくんなまんし」
なにがわっちもだ
もう二度と来なくていい
だれか教えて欲しい
この閉じ込められた籠の中からいつ抜け出せるだろう
いつからだろう
この仕事に何も思わなくなったのは
つきだしを経て太夫の位置にくらいついた私は
きっと振袖新造の時の方が余っ程楽しそうに働いてただろう
“ 菫色の着物を着た美しい少女 ”
なんて
誰も私の心や思いを見てくれないくせに
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作者名:いのみづちゃん | 作成日時:2017年8月29日 10時