33.お裾分け。 ページ33
「あれ？センパイ、もう吸ったの？」
喫煙室にいるにも関わらず、何もしてない私にニノミヤが不思議そうに訊く。
「ううん、ライター無くなってたの忘れてて」
「そうなんだ、じゃあ火あげよっか？」
「あ、ありがと」
私ってば、さっき煙草辞めるって決めたくせに。
ポーチに片付けてた煙草をもう一度出して唇に挟み、長椅子に座ってるニノミヤの方を見ると彼はまだライターを持ってない。
「準備出来た？」
そう言うと、ニノミヤも唇に煙草を挟み目を細めて立ち上がり
壁に凭れて立ってる私の隣にやって来て、同じように壁に凭れた。
ヒールを履いてる私と、そんなに目線が変わらないニノミヤの肩が私の肩に触れる。
火を借すだけで、こんな近くに来る必要ある！？って、内心はドキドキしながら平静を装ってると
その距離で、彼が私の方に顔を向けた。
「ん」
ニノミヤが唇に挟んでる煙草の根元を指で軽く押さえて、口元を少し前に出す。
「...んっ！？」
思わず自分の咥えてた煙草を口から外し、「何やってんの！？」って慌てて訊くと
ニノミヤも煙草を外して答える。
「火、あげるって言ったでしょうが」
「だって...え？」
「オレの煙草の先から取ってよ、火」
「...いや...えぇ...？」
「あ、見られてたら恥ずかしい？」
もう一度、煙草を咥えたニノミヤが
スッ...と、目を閉じた。
こんな至近距離に
目を閉じてるニノミヤが居て
心臓が、ちょっと、信じられない位バクバクしててしんどい。
私が咥えた煙草の先を、ニノミヤの唇に挟まれてる少し短くなったソレの先に付ける。
煙草２本分の距離に、ニノミヤの顔。
震える息をスゥッと吸い込むと、煙草の先からチリチリと小さな音がして
私の胸の中に、苦い煙が広がる。
その瞬間、ニノミヤの目がパチっと開いた。
「っ！？ゲホッ...！ゲホッ...」
「え？どしたの？変な所に煙入った？」
アンタが突然、目を開けたから！
アンタの無駄に白くってキメ細かい肌に見惚れてたの、バレるかと思って焦ったの！
「ゲホッ...」
「はいはい、落ち着いて」
「...ケホッ」
...落ち着けないよ...
私の背中をゆっくりと擦ってくれてる、ニノミヤの手
「センパイ、大丈夫？」
子供っぽいんだか、大人っぽいんだか分かんないその声。
何かもう、泣きそうなんだけど
何、この気持ち。
ホンット、嫌になる。
ウッスラ涙が滲んじゃってるのは、噎せたせい...って事で良いでしょ？
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2014年5月13日 20時
