明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ8)

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183.秘密。ページ8

一緒に乗り込んだエレベーターが止まったのは、5階。

「え...やっぱり、二宮くんち...」
「もー。違うっつってんだろ？」

先に降りた二宮くんが「早く降りてよ」って手招く。

「こっちこっち」

私の前を歩く彼が、廊下の端にある階段を昇って行く。
5階が最上階じゃなかったの？
でもエレベーターのボタンは5階までしか無いし...

昇りきった薄暗い踊り場には小さなドア。

そのドアの前で振り返った二宮くんが、鍵を出してチャラチャラ振って見せる。
家の鍵？って思ったけど、あのKのキーホルダーは付いてないから別の鍵らしい。

「オレの秘密道具」
「鍵が？」
「そ」

クルン、とまた背中を向けた彼がその小さなドアの鍵穴に鍵を差し込んだ。

ガチャっと解錠された音が響く。

二宮くんが扉を押し開けると、外からの緩い月明かりで彼が逆光になった。

影になった二宮くんが、小さなドアをくぐってまた振り返る。

「おいでよ」

その声に、ワクワクした。

知らない場所に足を踏み入れるのは、いくつになったって胸が踊る。

腰をかがめなきゃくぐれない程に小さなドア。

そこを抜けると、夜空が広がっていた。

ドゥパレに屋上なんて、あったんだ。
知らなかった。

「ここ、オレの秘密基地。だから、これは秘密道具」

二宮くんがさっき使った鍵をまたチャラチャラさせて、ポケットに入れる。

「秘密基地...憧れの響き！」
「だろー？羨ましいか」
「羨ましい！悔しい！」
「ンフフ、何で悔しいのよ」
「だって、屋上あるの知らなかった！ここの住民なのに！」
「オレのだもん、ここ。忘れてる？オレ、ここのオーナーの御曹司だからね？」

クフッて可愛く笑って言うもんだから、何だかマイルドになってるけど結構な嫌味だな。

屋上には真ん中にベンチが置いてあって、他には特に何も無い。

「オレだけの場所なの」

そのベンチに座って、空を見上げながら二宮くんが言う。

横顔が、月に照らされて...

...あぁ、やだ。
綺麗とか思っちゃったし。

「A、だんご食おうよ」
「えっ！？あ、...うん。食べる」

ベンチに私も座ると、紙袋の中からタッパーを出して私の膝の上に乗せて

自分はベンチの上に両脚を上げた。

「お行儀悪いよー？」
「癖なんだよ、それよりだんご！あーん」
「はぁ？自分で食べてよ」
「あーん」

二宮くんは、私に向かって大きく口を開けてる。

「......もう...」

何で私が...と思いながら、その口にお団子を放り込んだ。