明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ35)

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210.安心して。ページ35

二宮くんに抱き締められて、何だかパニックになりかけてる頭で冷静に考える。

どれが冷静って状態だったかも分かんないけど、自分なりに冷静になる。

告白...された。うん、された。

『好きだ』って、『想ってる』って、言われた。

でも付き合いたい訳じゃ無いって。

聞かなかった事にして、って。

「A、何考えてる？」

私を抱き締めたまま、二宮くんが話す。

「...何か色々考えてるんだけど、何一つよく分からない...」
「フハハッ！そっか、だよな」
「......」
「じゃあ、オレも言わなかった事にするよ」
「えっ...」

スっと彼の身体が離れた。

「もう、抱き締めたりしない。安心してよ」

両手をパっと広げて、私に見せる。
まるで、銃を構えてる人に『何も持ってませんよ』って示してるみたいに。

襲ったりしないよ、って言ってるみたい。

「だけど、今度告白する時はAの全部を貰うつもりで言うから」

何も言えない私に、二宮くんがクスっと笑った。

「さーてと、ビール飲もっか」
「...えっ！？」
「え？飲まないの？」
「や...飲む...けど...」

何、この切り替えの早さ...。

相変わらず、毛布は一枚を二人で使ってるし

肩は触れ合ってるのに

「ほい」
「あ...うん、ありがと...」

缶ビールを渡されて、「カンパイ」ってその缶に勝手に二宮くんの缶を当てられる。

「Aのサキイカ、食べて良い？」

二宮くんがコンビニ袋をゴソゴソしたと思ったら、私が買ったサキイカの袋を開けた。

「あ！ダメ！それ私の！」
「ミックスナッツ、あげるってば」
「お豆、あんまり好きじゃないもん！」
「フハハッ！お豆って！」

肩でドーンと押されて、負けじと押し返す。

間違い無く、これまでの私達と同じ

フザけ合ってた時と、何も変わってない

......はず。

私達はコンビニで買ったビールを全部飲んで、二宮くんは酔ったのかヘラヘラしてたけどもう私に抱き着くなんて事無くって

私は何本飲んでも酔えなくて「飲んでも酔えないなんて事が本当にあるんだ！」ってのを、齢21にしてもう知ってしまった訳で...。

「家まで送ってやろうか？」ってやっぱりヘラヘラしてる二宮くんをちょっと無理やり彼の部屋に押し込んでから、自分の部屋に戻ってベッドに倒れ込むと

ゆっくり色々考えたいと思ってたのに、そんなの無理なほど目が回り出した。

時間差で酔いが来ることもあるのね...なんて事まで知ってしまった、齢21の秋の夜。