明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ34)

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209.覚えてて。ページ34

『幸せになれる気がしない』なんて、うん...言ったかな...と思う。

でも、言った事すら忘れてた。

抱き締められた身体は、寒いなんて感じる暇も無いくらいに熱い。

この熱さが毛布で物理的に暑いのか、脳内から何かしらの物質が分泌されて暑いのか分からない。

二宮くんがの力がフっと緩まって、身体の間に隙間が出来た。

そこに風が抜けて、涼しい。
思わず「ハァ...」と、息が漏れた。

「ウハハッ！えっろい声出すなや！」
「はっ！？出してないし！」
「出したよ、『ハァ...』って。ンフフ...」

妙に色っぽくしなを作って二宮くんがどうやら私の真似をしたけど、絶対私こんなに色っぽくない。

「オレ結構我慢してるから、そーゆーの無しね」
「...そーゆーのって...」
「誘わないでねってコト」
「誘ってない！」

クフフ、って笑ってる彼が俯いて「あーもう...すっげぇドキドキすんだけど...」って呟いた。

「A」
「...はい...」
「さっきの全部、聞かなかった事にしてね」
「...はい...？」
「でも、これだけはちゃんと覚えてて」

毛布の中で、手を握られた。両手。

ギュ、ギュ、って。

「お前を好きだって想ってる奴はちゃんと居るよ？目の前に。結構近くに居たね」

女の子みたいな表情で笑うから、一瞬私は誰と話してるんだろう...って変な気持ちになる。

「だから幸せになれる気がしないなんて、悲しいコトはもう言うなよ。ちゃんとお前は想われてる」

......やだ...泣きそう...

目を閉じて唇をギュウ...っと噛むと、ほっぺをツンツンってつつかれた。

「分かった？」
「......うん...」
「人から想われるのって、幸せでしょ？相手が誰だったとしても」
「......」
「その幸せな気分だけ、覚えてて」

コツン、と二宮くんのオデコが私のオデコに重なる。

「ごめんね、オレで」
「......え...？」
「お前を想ってるのが、イケメンマネージャーじゃなくってごめんね」
「...もう...蒸し返さないでよ...」

ンフフって、彼が小さく笑って

「もう少しだけ、こうしてても良い？」

至近距離で見える口元が、掠れた声で囁いた。

「チューとか、しないからさ」
「......」
「あ、疑ってるだろ。しないよ、ホントに」
「......」
「だって、チューしちゃったら止めらんないもん。分かってる？空が見えてるって言ってもここだって密室だからね？」

重なってたオデコはスルっと離れて、また私は二宮くんの腕の中に閉じ込められた。