明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ29)

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204.愛好会会員。ページ29

麻薬でも入ってるのか...櫻井さんが言ってた三十四のラーメン。

私も定期的に無性に身体が欲すると言うか、何日かに一度「食べたい！」って波が来るんだけど昨日の夜にビッグウェーブに襲われたから、今日は我慢できずに一人で食べに来た。

ランディナ終わりの、ちょっと夕飯には遅めの時間。

「智さん、こんばんはー」
「あ、Aちゃん。いらっしゃい、ここおいで」

智さんが洗い物をしながら、視線で席を示した。

店内にはお客さんがカップル一組だけ。
智さんの正面になるその席に座ると、自然と彼の手元に目が行ってしまう。

何度見ても思う。綺麗な指。

「Aちゃん、いつもと同じで良い？」
「あ、はい！」
「ラーメンと鮭のおにぎりね」
「フフッ、何だか常連さんの気分です」
「常連さんでしょ？」

前掛けで手を拭いた智さんが一瞬だけ私を見てふわっと微笑み、すぐに調理に取り掛かった。

ドキっとしたー...今の、天然なのかな...
やっぱり、絶対、間違い無くモテるよ！この人！
爆モテだよ！！

「智さん、智さん」
「んー？」
「ファンクラブとかあるんじゃないですか？」
「へ？何の？ラーメンの？」

ラーメン茹でながら、キョトンとした顔。
ファン...そんなのあんのかな...ってブツブツ言ってる。

「あ...アハッ、はい！美味しいから、三十四のラーメン！」
「じゃあ、Aちゃんがファンクラブ会員番号001番だねぇ」
「えっ！？やった！」

何か、よく分かんないけど嬉しい！

「会員特典は、三回来てくれたらプリンサービス」
「えぇっ！？やったー！！」

特典があった！普通に嬉しい！！

晴れて三十四ファンクラブ会員番号001番になった私は、入会特典って事で食後にプリンを出して貰った。

その頃にはもう、お客さんは私だけになってて智さんはレジで何か書いてる。
事務仕事もあるだろうし...って気にせずプリンを食べてたら、「これ、あげよ」って私の隣に座った彼がテーブルに置いた一枚の紙を私の前まで滑らせた。

「会員証」
「すごっ！」

その小さな紙には、筆ペンで(しかも超達筆)『三十四愛好会会員番号〇〇壱天野A』って書いてある。
そして、裏には小さな一本線。

「これは？」
「何回来たか分かるように『正』を書いて行こうかなぁと思って。それ、一画目」
「なるほどー」

その紙をマジマジ見て「すぐ溜まりそうー」ってニヤニヤ笑ったら

智さんもニシャっと笑って、私の頭をポンポンと撫でた。