明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ22)

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197.TESTAMENT。ページ22

「...何かあった？」

その目から視線を逸らさずに、訊いてみた。

「んー...まぁ、付き合えって言っといて何も説明しないのはフェアじゃないよね」

二宮くんがクスっと笑う。

「今日さ、実家行ってたのね」
「うん」
「で、ちょっと探してる本があって、とーちゃんの本棚を漁ってたの」
「うん」
「そしたら本と本の隙間から封筒出て来てさ...」

これ位の、って指を使って封筒の大きさを示す。

「オレさー、ヘソクリだー！って思ったの。見付けたぜ！ってとーちゃんを脅して半分位貰っちゃおうってね、思ったのよ」
「フフッ」
「でも、中身...札じゃなかった」
「......」
「手紙、だったんだよね」

フゥって息を吐き出した二宮くんは、その手紙の内容を思い出してるのかちょっと視線を上に向けた。

「人の手紙なんて、読んじゃダメだって思ったんだけど...ウッスラ透けてた字がさ......かーちゃんの字だったんだよ」
「...お母さんの...？」
「小学校の先生の字ってさぁ、読みやすいって言うか綺麗じゃん？でもかーちゃん、ちょっと癖のある字だったの。だから、すぐ分かっちゃって」
「......」
「気が付いたら、夢中で読んでた」

ハッ、って笑った彼がチラっと私を見る。

「ここまで、OK？」
「お...おうけい」
「ンフフ、そんな怖い話じゃねぇから緊張すんな」
「あ...はい」

そう言われても...何か、重い雰囲気の内容じゃない？
それ、私が聞いても良いのかな...。

「手紙はね、まぁ...遺言だったんだけど」
「......」
「『再婚しないなんて、言わないでね』って。良い人が居たら、私に悪いなんて思わずに再婚して下さいって内容だった」
「......」
「その方が、私も安心して休めます...って。貴方みたいに何も出来ない人とカズを二人にしてる方が心配で成仏できない！ってさ」

後頭部をポリポリと掻いた二宮くんの表情は、穏やかだ。

「『カズが新しいお母さんと出逢えるのが、私の望みです』なんてさ...もうウソ、マジで？って感じでさぁ...」
「...二宮くん...」
「オレに母親が居ない寂しさを味あわせたくないから、って。...なのにオレ、かーちゃんの想いをぶっ潰しちゃったみたいなモンでしょ？」
「......」
「まだ子供だったのに勝手に家、出ちゃってさ。勝手に『寂しい』とかちょっと思ったりしてさ。かーちゃん、それを上から見てどう思ったんだろうって...」

また、彼は空を見上げた。

オレンジ色の空に、薄い雲が流れた。