明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ21)

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196.呼び出し。ページ21

「どこに...ですか...」

何となく画面の向こうに送り主の顔が見えるような気がする。

『集合って何が？』

あえて、強気に返してみる。

意外とすぐ既読が付く。
あの性格だから、焦らされるかと思ったのに。

『屋上』
『二宮くんは単語しか打てないんですかー？』
『A、屋上に集合。二宮くんが待ってるぞ。急げ。』

私の嫌味には一切触れないのが、逆に悔しい。

「もう...何なの...」

とりあえず、ボサボサの頭を隠す為にニット帽を被って部屋着のワンピースのまま家を出て

こないだ教えて貰った屋上への階段を昇る。

前は鍵がかかってたドアノブを捻ると、ギィって音と同時に扉が開いた。

こないだは夜空だったけど、今日の空は夕焼けでオレンジ色。

「お、来た来た」

ベンチに座ってる二宮くんが身体を捻って振り返る。

「家に居たから来れたけどさー...私が居ないかもとか思わなかったの？」
「部屋の電気ついてるの、さっき下から見たもん」
「...ちょっとストーカーに狙われてる気分なんだけど」
「フハハッ！安心しろ、自惚れんな！」

何故か偉そうな彼が、「まぁこっちおいでよ」って手招くから私もベンチに座った。

「あ、スッピン」
「だって今日、休みだったし」
「オレも休みだった。なぁ、腹減ってる？」
「何か二宮くんって、いつも私がお腹減らしてると思ってる？」
「べっつにそーゆーワケじゃ無いんだけどね、タイミング？ンフフ」

肩を縮こめて笑って、私の膝の上に紙袋を置く。
何か良い匂いがする。

「これ何？」
「うん、まぁ...ね」
「開けて良いの？」
「うん」

こっちも見ずに、空を見上げてしまった二宮くんの隣で紙袋を開ける。

「......え？これ...」
「食おうかなー、と思って」
「でも...」
「一人じゃちょっとね、食えないなーと思ったから。A、食い意地張ってるし付き合ってくれるかなーって」

ちょっと気になる言葉はあったけど、それより気になる袋の中身。

「...クロワッサン...」
「ロマドーのパン屋で買って来た」
「...私にくれるんじゃなくって、二宮くんも食べるの？」
「独り占めする気かよ！図々しいな！」

二宮くんはケラケラ笑ってるけど、私は笑えなくって

だって、クロワッサンは......

「...一緒に食ってくれる？」
「二宮くん...」

オレンジ色に染まる屋上で、私を見た色素の薄い彼の目は

単純に綺麗で

彼が何を考えてるのかも分からないのも相まって、ちょっと苦しくなった。