明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ3)

今日:18 hit、昨日:3 hit、合計:958,858 hit

178.その理由。ページ3

翌日、ランチから出勤するとロッカーに静香さんが居た。

相変わらずの綺麗な横顔に、色んな意味で女としての敗北感をガシガシ感じる。

「あ、おはよ。Aちゃん」
「おはようございます！」

失恋したのは、私の都合。
静香さんを恨むのは、お門違い。

そもそも静香さんを嫌いになるなんて無理な話だし。
まぁ...羨ましいなとは、正直思うけど...
それはすっごい思うけど...

だって彼氏が櫻井さんって！

もうそれ、どんなパラダイス！？
泣きそう、想像しただけで泣きそう。

羨ましすぎて膝から崩れ落ちそう。

もう考えるのやめよ...
塞がりかけてる傷口を自分でこじ開けてる気がする...

自分のロッカーを開けて、鞄を入れ

ハンガーに掛かった制服を出した。

着替え終えてる静香さんは、ロッカー内にある姿見の前で髪をまとめてる。

「...あ、...静香さん」
「ん？」
「桜...辞めるって...」
「あ...うん、そうなの。言ってなくてごめんね」

振り返った静香さんが申し訳無さそうに眉を下げたから、慌ててしまった私は

「大阪！行くんですか！？櫻井さんのトコ！」

なんて、また自分の傷口に今度は塩を塗りたくるような事を口に出してしまった。

「フフッ、ううん。大阪には行かないよ」
「え...？」

相葉くんに聞いた時から、静香さんは櫻井さんを追い掛けて大阪に行くんだと思ってたからその言葉に驚いた。

「だって、翔さんは私を巻き込みたくないって言ったでしょ？もし私が大阪に行っても迷惑なだけだよ」
「そんな...」

彼女が自分を追いかけて来てくれて迷惑だなんてコト、あるのかな...
きっと嬉しいと思うけど...

でもそんな事を考えてるだけで、胸がシクシクする私は未練がましいなと思う。

「だからね、とりあえず私は私で自分に自信を持てる人間になろうと思って」
「自信...？」
「うん。翔さんと居るとたまに『私はこのままで良いのかな』って悩んだりしてたの。翔さんって向上心の塊みたいな人だし」

確かに、そうだったな...と思い出す。

「私、やりたい仕事が他にあってね。でも桜に来ると翔さんが居て、...その姿を見れるからここを辞められなくて」

ただ単に好きな人の近くに居たかっただけ、って静香さんが照れ臭そうに笑って言った。

静香さんも、櫻井さんに片想いしてた。

それだけの事なのに、私と同じだったはずなのに。

“恋は、誰かが幸せになるとどこかで誰かは泣いている”

よく聞く言葉を、妙に実感した。