明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ19)

今日:21 hit、昨日:3 hit、合計:958,861 hit

194.シアワセって。ページ19

「けど、櫻井さんは浮気なんかしないよね」
「静香さんも浮気なんかしないよね」
「私、愛人にもなれないよ」
「俺、間男にもなれないよ」

はぁ...って溜息を吐き出した後、ブハッ！て二人吹き出した。

「アハハッ！もう、俺らの思考が不幸人生まっしぐらだってば！」
「危険だね、これは。幸せになれない」

不幸人生に転げ落ちて行きそうな私達に、智さんが「甘いモン食べて、とりあえず幸せになったら？」ってプリンを出してくれる。

「人生の先輩から、サービスしちゃる」
「やった！おーちゃん、ありがと！」
「智さん、ありがとー！」

智さんの作った器に入ったプリン。

一口食べたら、幸せ。

「智さん、このプリンは『サトシの幸せプリン』って名前にしましょう」
「あははっ、それ良いかもねぇ」

智さんが眉をキュッと下げ笑って、犬歯が見えた。

「ねぇ、おーちゃん。俺、幸せになれるかなぁ？」

プリンをスプーンでほじくりながら、相葉くんが独り言みたいに呟く。

「相葉ちゃんの笑顔って、見てたらこっちまで楽しくなるんだよねぇ」
「え？」
「何か、おれも幸せな気分になれる」

智さんの声が、優しく届く。

「周りを幸せにできる子なんだから、相葉ちゃん自身も幸せになれるよ。絶対になれる」

大丈夫、ってカウンターから伸ばされた腕にポンポンと頭を撫でられた相葉くんは唇を噛んで、パチパチと瞬きをした。

「智さん、私も幸せになれる？」
「Aちゃんは可愛いから大丈夫！」
「アハッ、お世辞でも嬉しいです」
「男からの『可愛い』は、素直に受け取れば良いんだよ？」

ね？って、今度は私の頭をポンポンした。

食事を終えて、三十四を出る。
その頃には、お客さんが私達以外居なかったから智さんが外まで見送ってくれた。

何度か振り返ったけど、ずっと智さんは見送ってくれてて、相葉くんは角を曲がるまで後ろ歩きをしてた。

例の如く、うちまで送ってくれるスーツ姿の相葉くんと、肌寒くなったロマドーを歩く。

「相葉くん」
「んー？」
「大阪の研修、頑張ってね」
「うん。頑張りまっせ！やったろやないかい！」

変な大阪弁で張り切る相葉くん。

「櫻井さんに...よろしくお伝え下さい」
「...ん、伝えとく」
「うん...」
「翔ちゃん、食い倒れで太ってるかもね！」
「太っても絶対格好良い」
「くっそー...悔しい！」

きっとその『悔しい』は、色んな意味があって

だけど相葉くんは、笑ってた。