明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ18)

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193.極限状態。ページ18

ラーメンには、いつもよりチャーシューがいっぱい乗ってる気がする。

「あれ...？智さん、私頼んだの普通のラーメンなのに...」
「あ、俺のもだ。おーちゃーん、間違ってるよー？チャーシュー麺になってる」

二人でカウンターの中の智さんに声を掛けると、「あれ？そう？」って微笑んで

「笑ってる二人見てたら、ウッカリしちゃったかな？」

なんて言って、洗い物をしてる。

「......おーちゃん、格好良い」
「あれが本物の大人の男だよ、相葉くん」
「俺はまだ修行が足りないな」

ムゥ...ってなった相葉くんが、何か気合いを入れてラーメンを啜った。
ズルズルズルー！って凄い音。だし、凄い顔。

三十四のラーメンは、食べると気持ちが落ち着く。
あったかくって、優しい。
きっと、智さんの人柄が味に出てるんだと信じてるんだけど。

「俺さ...」
「ん？」

ほっぺの中にあるラーメンを飲み込んで、相葉くんがこっちを見る。

「本当はホテル泊だったんだけど、それを経費の無駄ですって断って翔ちゃんちに泊まらせてって頼んだの」
「そうなの？」
「翔ちゃんの偵察しなきゃと思って。浮気とかさ、してないだろうね！？って」
「......」
「そんなコトしたら許さないよ、って」

また、ズルズルとラーメンを啜るけどさっきみたいな勢いは無い。

「もし何かあったら...相葉くんにチャンスが来るかもしれないのに？」
「それも思ったけどね。でも...」
「うん」
「...好きな人の幸せを望まなきゃね」
「...良いヤツ」
「...でしょ？」

そこから二人黙って、ラーメンを啜って

お互いが食べ終わった頃、相葉くんがデカンタの水をコップに注ぎながら口を開いた。

「本当はやっぱ俺が幸せにしたいけどね」
「フフッ、うん」
「ちょっと綺麗事、言っちゃった」

少し自嘲気味に笑った彼の背中をポン、と叩く。

「私だって、本当は『櫻井さん私と浮気してくんないかな！？』とか、思うよ？」
「えー？浮気で良いの？」
「もうこの際それでも良いかも...とか思うんだって。失恋の極限状態」
「まぁ俺も浮気で良いから一度...とか思ったけど」
「それが本音だよねー。ゲスいけど」
「アハッ！ゲスいけど」

恋なんて自分の事ばっかり結局考えちゃって、でもやっぱりそれは違うでしょって自己嫌悪。

二番目でも良いからって思ったりして、でもやっぱり一番じゃきゃ意味が無いって思い直して
そんな事をグルグル考えてる内に

きっといつか、忘れられるんだと信じてる。