明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ2)

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177.矛盾。ページ2

普段はどちらかと言えば、ゆるーい二宮くんの視線が

今は鋭く私を見てる。

怖いのか、何なのか、心臓がドクドクと早打ちし始めた。

「ごめっ...ホント、二宮くんがそんな...っ」

そんなにまだ想いを引きずったままだったなんて、気付かなかった...

私、バカだぁ......

いたたまれなくて、彼から目を逸らした。

「ばぁか」
「ですよね...」
「ンフッ、ドラマみたいだった？」
「...はい？」

クフフって笑い出した二宮くんをもう一度見上げると、可笑しそうにニヤニヤしてる。

「こーゆー台詞が聞きたかったんじゃないの？」
「えっ！？」
「もう何年経ってると思ってんのよー。とっくに吹っ切ってるわ。麻疹みたいなもんだったっつったでしょ」
「あの...え？」
「オレ、そんな女々しくないの。女子より可愛い顔してるけど」

キョトンとしてるであろう私に、彼は「ほら、今のツッコムとこ！」って掴んでる私の手首をブンって振った。

「あっ...おーい！女子より可愛いって何だよー！」
「棒読み！下手くそか！」
「...だって...もう、何！私、ホント申し訳無いって思ったのに！嘘なの！？」
「ドキッとした？」
「ドキッとゆーか、ヒヤッとしたわ！」

掴まれてる手首を、ブンッと振り返す。

「Aからかうの面白いんだもん」
「私で遊ばないで下さい」
「あ、怒った？」
「...本気でごめんって思ったのに」
「アハッ、ごめんごめん」

二宮くんが掴んでた手首を離して、その手で私の頭をポンポンしてから集合ポストを出て行く。

私も開けっ放しだった自分ちのポストを閉めて、そこを出た。

エレベーターの前では二宮くんが電子表示を見ながら立ってて

私が来たのを横目で確認すると、「あげる」ってミントガムをくれた。

「さっきの、ホントに嘘だからさ」

『ホントに嘘』って変な言葉、と思いながらガムを口に入れる。

「ンフフ、ごめんってば！怖い顔すんなよー」
「元々こーゆー顔ですー」
「違うね。オレが知ってるAは、もっと可愛いもん」
「はっ！？」

一階に降りてきたエレベーターの扉が開いて二人で乗り込む。

「今のもどーせ、ホントに嘘とか言うんでしょ」
「何が？どれのコト？」
「......何でもない」

口の中でミントが香る。

エレベーターが二階で止まった。

「じゃあね」

私が降りると、「嘘じゃないよ」って二宮くんの声。

「さっきのは、ホント」

振り返ったら、二宮くんがヒラヒラ手を振ってて

その扉は閉まった。