05 ページ6
いつも三年生教室の窓際からアレンのことを見ていた。毎年新入生を眺めるのが習慣になっていたAの目に映っているのは新入生の中でも飛び切り目立つ白髪だけ。少しの不安と沢山の期待に胸を膨らませる一年生の真っ白なシャツと同じようなその色に、心奪われたのだ。
今年から三年生になるラビと神田が、確かこの教室は自分たちが一年生の時に使っていた教室だったと話しているのを聞いた。春風に誘われて一瞬だけラビがAのいる窓際に視線を移したような気がして、どきりとした。見えるわけないのに、目が合ったような気がするなんて。きっと、少しでも思い出して欲しかったのだと思う。忘れて欲しくないという思いが強いのだ。
｢にしても、今年は変なじーさんみたいな奴がいたよな｣
｢あ？ それモヤシだろ｣
｢モヤシィ〜？ 白髪だからか老けて見えたぜ｣
あの子のことだ！
ヘラりと笑うラビを穴が開くほど見つめて、もっとその話をしてほしいとテレパシーを送ったが残念なことに話題は別のことになってしまう。窓際の壁にもたれかかっていたラビがばっと飛び起き、向こうの校舎を歩く黒髪の少女にちぎれんばかりに手を振った。可愛い子だけど、見たことないなあ。教室の前まで走っていったラビの後をついてきた神田が腕組みをしてその少女を見ている。
｢おっ、リナリー！ 今年から二年だろ？ クラス替えどうだったんさ？｣
｢まあまあだったわ。あ、私委員会の仕事でこれから一年生の頭髪検査あるから行くね。放課後に会いましょ！｣
リナリーが眩しい笑顔でパタパタと走り去ると予鈴がなり、神田もラビも自分の席に戻って行った。
・・・
だからね、だからねアレン。君が私のことを見えるって知ったとき、すごく嬉しかったんだよ。四月に一度だけ、アレンと目が合ったことがあった。屋上から中庭でお弁当を食べるアレンを眺めていると、視線に気付いたアレンがふとAを見た。制服を着ていたし、遠目から見ただけだったから気付かなかったのだろう。それでもAは、アレンが自分を見つけてくれたことが嬉しかった。そうやってどんどん彼のことを知っていくと、Aがいつもアレンを見ているようにアレンもいつも誰かを見ていることに気付いた。彼はいつも二年生教室の方を、リナリーを眺めているのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「アニメ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい！暑いので熱中症には気を付けてくださいね！ (2018年5月19日 11時) (
レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます！ これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい！ (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか！？とっても可愛いです！このお話大好きです！ (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かがり | 作成日時：2018年3月30日 18時
