あの夏の名前を知らない ページ50
ラビと神田は卒業した。ラビは国公立の難関大学を受けて医学部に見事合格、神田は地元に残るらしく一つ上の"家族"がいる大学へと進学した。
「泣くなよ〜アレン」
「泣いてないですよっ!」
「冗談だっつの」
「おいリナ、お前が泣いてどうすんだよ」
「あーあーリナリー泣くなよ、おねーさんだろ?」
「……また遊びに来てね、ご飯も行きましょう! 絶対、絶対よ!」
「じゃあ神田の奢りでお願いします」
「何でだよ」
春からそのスカした面を見なくていいと思うと気分がいい。大きな喪失感を誤魔化すために最後まで神田とは喧嘩をした、いつもと同じようなことをしていないと耐えられないと思った。式が終わって卒業生と写真を撮っている群れの中を潜りくけるとさっさと家に帰ってひとりでお昼を食べた。またひとりになるのにもいい加減慣れていた。
「ティム、ティムキャンピー! 天気がいいから散歩に行こう、お前の好きなつくしもあるよ」
クリーム色の毛をした大型犬を連れて散歩に行く。天気が良くて暖かい今日は卒業式に合っていたなと思う、そういえば前まではティムの散歩もAがやってくれていたっけ。思い出して俯いていると丁度河川敷の道を向こうから人が歩いてくるところだった。普段は大人しいティムが急に吠え出し、ありえない強さでリードを引っ張っていく。何事かと驚くアレンにお構い無しにティムは吠え続ける、どうやら向こうから歩いてくる人物に吠えているらしい。ティムが人に吠えるなんてことは珍しいのでアレンはマジマジとその人物を見る、段々と近付いてくるにつれてアレンは息が出来なくなった。まさか、そんなはずはない。
「……あ、A、」
「はい?」
ぽろっと単語が口から出てきた。それを拾った彼女は立ち止まって不思議そうな顔をする。Aだった、間違いなくAだった。生身の体で色があって生きている、実際の彼女は高等部の制服を着ているからか大人びて見えてアレンより少し背も高かった。絶対にAだ、そう確信した瞬間目頭が熱くなって情けなくも彼女の前で泣いた。
「Aだ、Aがいきてる……!」
「ええっときみはどちら様かな?」
「アレンです、アレン・ウォーカー」
この際忘れられていてもなんでもよかった、聞きたいことが山ほどあって言いたいことも山ほどある。それもまた今度でいい、だって彼女が狂ったように吠えるティムを見て「犬好きなのに昔から吠えられるんです」ってそう言ったから。
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月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい!暑いので熱中症には気を付けてくださいね! (2018年5月19日 11時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます! これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい! (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか!?とっても可愛いです!このお話大好きです! (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かがり | 作成日時:2018年3月30日 18時