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夏祭りの日の夜、花火を見に行く人たちに紛れてセーラー服がぼんやり暗がりに浮かび上がるのを見た。それが最後に見たAの姿だった。
「花火は一緒に見れない、どうしても一緒に見たい子がいます……ごめんなさい」
「いいよ、謝らないで。分かってたから」
「すみません」
「ほらほら顔上げて! じゃあ明日の灯篭渡しははやく終わらせなくちゃね」
明日もよろしくねと笑ったリナリーの歪な、今にも泣きだしそうな笑顔を覚えている。脳裏に焼き付いて離れない光景だった。全部終わったら彼女に話して、想いを伝えていつもみたいに笑いあってるはずだったのに、Aは突然姿を消した。姿が見えなくなったわけじゃなく、Aの気配そのものが消えてしまった。後を追うようにクロスもまたどこかへ行方をくらませAのことについては「時間切れだ」とだけ残しただけだった。「オレの手には追えない厄介なガキだ」と以前言っていたことからクロスが無理矢理彼女を祓ったわけではなさそうだ、謎を多く残したままいなくなったことにアレンは腹を立てていた。
Aが消えて直ぐに夏も終わった。気付いたら勝手に秋が来て冬が来て春が来ていた、ラビと神田ももう時期卒業する。皆勝手に自分を置いていなくなると思った。
・・・
目が醒めた。ゆっくりと重たい水の底から引き上げられるように意識が浮上して、自由の一切効かない鉛のような体に酷く驚いて瞼を持ち上げることすら出来なかった。ずっと、長い夢を見ていた気がする。今となってはもうそれがなんなのか思い出せないが、何だか楽しくて仕方なかったような気がする。そんな気がかりも家族の涙を見たら全部吹っ飛んだ、目を醒ましてよかったと大喜びで涙を流している。つられて自分も泣いた、生きてて良かった。心からそう思った。
「……おかあさん、おとうさん」
自分の意思とは関係無しにぼろぼろと涙が頬を伝ってシーツにシミを作る。高校一年生の時に事故で二階から転落した自分は長い間昏睡状態に陥っていたらしい、ずっと誰かに名前を呼ばれていたような気がしたと伝えれば両親はいつも自分に呼びかけていたのだと告げた。通っていた学校は留年扱いで在籍しているらしく、両親と話し合ってリハビリを初めて回復したらまた二年生から通うことにした。
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月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい!暑いので熱中症には気を付けてくださいね! (2018年5月19日 11時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます! これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい! (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか!?とっても可愛いです!このお話大好きです! (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かがり | 作成日時:2018年3月30日 18時