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「おーい! アレン、リナリー!」
早く来いよー、とずっと小さくなった神田とラビが学校付近にある神社の大きな御神木の下から呼んでいる。広くて何も無い田舎道にラビの声がわん、と木霊してざわざわ揺れる御神木の葉がそれを吸収してしまったみたいに彼の声はフェードアウトしていく。ふたりはいつの間にあんなに遠くまで行ってしまっていたのだろうか、アレンとリナリーは少しペダルに力を入れて神社で待つふたりの元へ自転車を進め始める。丘の上にある学校と桜の木が見えた。そういえばアレンはさっきまでこの桜の木が満開だった時のことを思い出していたのだった、今は栄養をつけて葉を伸ばしているこの木は数ヶ月前まで薄桃色の花弁を纏って降らせていたのだ。
「遅せぇよ」
「おいアレンぼーっとしてんなよ、熱中症か?」
「ねっ、ねっちゅうしょう?」
「轢かれて死ね」
「はい?」
「もーヤダ」
御神木の影で涼んでいるふたりの元へ着くとサドルから降りて自転車を停める。暑さのせいかぼんやりしていたアレンは「熱中症」をとんでもない風に聞き間違えた、夏バテにもほどがある。目の前にチカチカ星が弾けてアレンはハッとした。
遠くから運動部の掛け声が聞こえてくる。「ファイトー」、「おー」、「ファイトー」、「おー」色々な部の掛け声が混ざってこの炎天下の中でも気合いの入っているサッカー部の声と野球部の声はセミの鳴き声に負けないで響いていた。サッカー部は夏の大会で優勝することを目標に、野球部は甲子園出場を目標に日々励んでいるらしい。一方人数が少ない女子テニス部はマラソンの途中のようだが、坂を下りて顧問の目が無くなったことを確認するとダラダラと歩き出すのが見えた。
「この後どーするんさ?」
「わたしはもう部門のアンケート集計だけよ」
「僕も買い出し済んだので」
「あー、アトラクション部門はミスコンの集計か!」
「なんですか? それ」
簡単に説明するとアトラクション部門ではこの学校で一番可愛い生徒とかっこいい生徒を決める投票の集計結果を発表する部門らしい。「オレは毎年二位でユウが一位なんさ」とラビは聞いてもいないことをペラペラと喋る。このふたりが一位と二位という事実に妙に納得してしまった。
「そーいやリナリーは去年ぶっちぎりで一位だったよな」
「ラビ、その話はもういいでしょ!」
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月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい!暑いので熱中症には気を付けてくださいね! (2018年5月19日 11時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます! これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい! (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか!?とっても可愛いです!このお話大好きです! (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かがり | 作成日時:2018年3月30日 18時