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それまで不審な目でアレンを見ていたくせに彼女の一言で掌を返したようにへらへら笑う教師を後にして廊下へ出る。可愛くてしっかり者で、教師からも厚い信頼を得ている優等生。そんな彼女に強い憧れを抱いていたのだと思う。
「ほんとうにありがとうございました、なんてお礼を言ったらいいか……」
「やだアレンくん、顔上げて。気にしなくていいから!」
「リナ」
アレンが頭を下げていると、頭上で硬い声がした。低くて硬い、それでいて少し水気を含んでいるような、でもやっぱり硬い声がアレンとリナリーの鼓膜を震わせる。思わず顔を上げた。美人、アレンが神田ユウという男に最初に抱いた印象はこれだった。良くも悪くも美人だと思った。濡羽色のリナリーに負けないくらい艶やかな髪はひとつに結い上げられていて、彼が動く度に揺れて光る宝石のような髪紐が綺麗だった。切れ長の澄んだ青の瞳がすうっと細められ、鋭い眼差しでアレンを捉える。なんだかいけ好かない、だけどそれ以上にこの男は美しい。失礼極まりない呼び方にムカついて自己紹介をした後はカンダという男に完全に会話から締め出されてしまって二人が何を話していたのかもうあまり覚えていない。どこかずっと遠くから二人を眺めていたような気もする。
「どこにいるのかしら。この前授業に出るように注意したのに、ラビったら言う事聞かないんだもん」
「サボりバレてじーさんに説教食らってるか懲りずに女引っ掛けてるかのどっちかだろ」
「やだ、信じられない!」
「どこ行く気だ」
「決まってるでしょ、ラビを連れ戻しに行くの」
「探すだけ無駄だと思うぜ」
「いいえ、見つけます。あ、アレンくんを一人にするわけにはいかないわね。先に教室に案内するね」
ぼんやりしていると急に自分の名前が引き合いに出されて我に返る。どうやら丁寧に教室の場所を教えてくれるらしかった、ぼんやりしていて突然の事に頭が追いつかず「はい」と返事をしてしまったアレンは図々しい奴だと思われなかったか心配だった。
「ここがアレンくんのクラスよ。わたしたちよく中庭でお昼を食べてるから、暇だったらおいで」
「あ、いえ、そんな」
「先輩だから気が引けるかもしれないけど皆面白い人たちなの、待ってるわ」
そう言い残して二階を登って行くリナリーの後ろ姿をずっと眺めていた。
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月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい!暑いので熱中症には気を付けてくださいね! (2018年5月19日 11時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます! これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい! (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか!?とっても可愛いです!このお話大好きです! (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かがり | 作成日時:2018年3月30日 18時