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「Aちゃんを見た気がする」ラビが夢を見ているような表情でアレンを振り向く。開け放たれた教室の窓に夜風が吹き込み、闇に浮き上がる白いカーテンがゆらゆらと揺れていた。一瞬だけ、夜より深いビロードのようなスカートが花開くように膨らんだのが、見えた気がした。
「二人とも早く帰りましょ?」
「……あー、うん。なんか夢見てたんかな、俺」
「僕も見たかもしれません。なんだか不思議な感覚ですね」
「やっぱお前も見えたさ? なーんか、怖いって気はしねーよな」
先程までのホラー映画よろしくな展開の直後だと言うのに、不思議と恐怖はなかった。その後はラビもアレンも妙な気分になりながらリナリーを家まで送り届け(この時兄のコムイが泣きながら三人を出迎えた)八時前にやっとアレンは帰宅するところだった。
「相変わらずリナリーの兄さんキャラ濃かったさ」
「あれをシスコンって言うんですね」
「お、じゃあ俺こっちだから。ジジイもうるせぇし急いで帰らんと、また明日さ〜!」
「はい、さようなら」
ラビの姿を見送ってから、アレンは全く信用していなかったが昔あの飲んだくれに貰ったお守りを無意識に握っていた。これで何の効果もなかったら、次会った時に殴ってやろう。急ぎ足で帰り道を歩いていると、途端に空気が変わった。暗かった夜が、塗り潰したような黒になる。――来た……! わかる、左眼が疼いている。ぞくりと嫌な感覚がしてアレンは走り出していた。
神社の裏にある家に転がり込むと鍵を掛けて部屋中の電気を全て付けて、ベッドに籠る。デジタル時計が九時前を指しているのを確認してから布団を深く被って、愛犬のティムキャンピーを呼ぶと一緒に朝を待った。こういう時、ティムが居てくれると心強い。クリーム色の毛並みを撫でながらアレンは微睡んで行った。
「……きて、…ん、……て」
とてつもない違和感にアレンは目を覚ました。明らかに今までとは違う。周りで何かが動き回っているのがわかるが、金縛りではティムの吠え声も聞こえない。ただ、目だけは使えるようだ。ただでさえ見るのは気分の良いものではないが、こういうのは気合いなのだ。気持ちで負けては金縛りも解けない。
「っ、いい加減にしろ! こんな所まで付いてきて、一体どういうつもりだ!?」
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月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい!暑いので熱中症には気を付けてくださいね! (2018年5月19日 11時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます! これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい! (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか!?とっても可愛いです!このお話大好きです! (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かがり | 作成日時:2018年3月30日 18時