03 ページ26
その日の夕方、電話で用事があるから少し遅くなると言ったアレンが嬉しそうにしていたのを受話器越しに感じて今日何があったのかAは嫌でも察した。アレンが嬉しそうな顔をしているとAも嬉しくなったが、それに関わっているのは大抵がリナリーのことなのでその度にチクチクと細い針で刺されるような痛みに耐えなければならなかった。
「なんだAシケた面顔しやがって」
「ここ、いたいなあって。クロスさんはそういう思いしたことあります?」
ぎゅっと心臓の辺りを抑えるAにクロスは一瞬黙り込む。人懐こい彼女と数日過ごすうちにある程度Aという人物を分かっていたクロスはこんな時「感傷中の乙女になんてこと言うんですか!」とプリプリ憤慨すると思っていただけに驚いた。素直に話すあたり、かなり精神的にきているのだろう。女を泣かせるのは趣味ではない、かといって幽霊少女に情が湧くほどお人好しでもない。だからクロスは今回も試すような言葉をかけた。
「お前は俺かアレンに消される存在だ、わかってんのか?」
「ちゃんと理解してるつもりです。でもわたしだってどうしたらいいかわかんないよ、後先考えずに傍にいたいって思うのはいけないこと? 言っときますけどわたしが一番わけわかんないんですからね!」
「あー青春青春、一途な女ってのは面倒くさいよなあ」
「何よそれ〜! 面倒くさい女で結構!」
最後はいつもの調子できっとクロスを睨みつけたAだったが、結局ぽろりと涙が零れた。それにぎょっとしたクロスは慌ててAから距離を置く。今ここでアレンが現れることが彼にとって一番恐ろしいことなのだろうなとAは考えた。実体がないからわたしには何も出来ないのに。おかしくなって笑っていると丁度アレンが帰宅した。気持ちを切り替えて今日もティムの散歩をしたよと自慢しようと玄関へ向かうが、さっきまでビールを飲んでくつろいでいたクロスが飛ぶようにして玄関先へ姿を消した。不審に思いながらもなぎ倒された缶ビールの中身が零れているのに気付いたAは床を拭いて冷蔵庫から新しい缶ビールを取り出すと机の上に置いておく。
そういえば人の話し声が聞こえると不審に思い玄関先を通り抜けてAは固まった。そこには他でもない愛想の良い笑顔を浮かべたリナリー・リーがいたからである。
23人がお気に入り
「アニメ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい!暑いので熱中症には気を付けてくださいね! (2018年5月19日 11時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます! これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい! (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか!?とっても可愛いです!このお話大好きです! (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かがり | 作成日時:2018年3月30日 18時