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ラビがいつまでも六幻のことを引きずり爆笑している間も、何度かラップ音があった。重い空気がじわりじわりと蝕む中、ラップ音が鳴った時に一度、神田がいつもの癖で目を見開き手元に無い竹刀を振るった時は怒っていたリナリーも流石に笑っていた。
「ちょ、それ、エア六幻……ひ、腹痛てぇ!」
「キレるとすぐ抜刀するからですよ、エア六幻もかっこいいですね。ぷぷぷ」
「でも、護身用に持っておくといいわね。神田、竹刀はどこ?」
暗がりに目が慣れ、必死に口の端がピクピクと動くのを堪えるリナリーを見ながらつられてアレンも笑いそうになる。少し違和感も和らいで落ち着いた四人は、教室の中にあるはずの六幻こと竹刀を探すことにした。
四つん這いになりながら慎重に机の角や床に手を伸ばしてみるが、一向に六幻の感触はない。それなら手当り次第に探ってみるのが妥当だが、今この状況でそんなことをすれば命取りになるかもしれない。何せ数分ほど前にラビが誤って(アレンは確信犯だと思っている)リナリーのお尻を触り、強烈な足蹴りをお見舞されたのだ。当の本人は今激痛に耐え、一人涙を流しながら情けなく床に転がっている。アレンも軽蔑と少しの嫉妬の意を込めて、教室が暗いのをいいことにラビを蹴っておいた。
「ちょ、痛っ! なあ今蹴ったの誰さ!?」
「口動かしてないで手動かせ、バカウサギ」
「いや今俺蹴られて――」
誰かが教室の電気を付ける音が聞こえたが、相変わらず暗闇のままだ。竹刀が見つからなければ最悪窓から外に出ることが出来る、もう随分時間が経っているし本当にここから出れないままでは困る。溜息をつきながらふと視界に映ったものに目を凝らした。
「……う、わ」
――人の髪だ。
真っ黒の、濡羽色の髪が床一面に広がっている。ゾワっと何かが背筋を走るような感覚に鳥肌が立つ。アレンが慌てて手を引っ込めるのと同時に、色々なことが起こった。誰かの悲鳴が聞こえ、教室の明かりが戻りドアが開く。一気に解けた緊張と消えた長い髪にアレンは安堵した。
「お前らも補習? 今日はサッカー部が最後だと思ってたけど、まだいるじゃん」
「……俺は帰る。行くぞデイシャ」
「へいへい、今日の晩飯楽しみだなっと」
切り替えの早い神田は、荷物を持つとさっさと教室を出て行ったがラビだけはずっと、窓際を見つめたままだった。
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月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい!暑いので熱中症には気を付けてくださいね! (2018年5月19日 11時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます! これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい! (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか!?とっても可愛いです!このお話大好きです! (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かがり | 作成日時:2018年3月30日 18時