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気付いてしまった。出会った頃からほんの少しだけ感じていた違和感、小さな波紋が広がるようになみなみと揺れていた水面は不協和音を鳴らしている。ねえアレン、きみは、
｢何してるんですか、もう｣
｢……そろそろ夏だなあって｣
暫く妙な沈黙が続き、漸くAは口を開いた。乾いた口内が音を紡ぐのを妨げる、吸った息が詰まって言葉が出なかった。早鐘を打ったような心臓をなんとか落ち着けようとしていつもの癖で左耳に髪をかける。そしてAからやっと出た言葉がこれだった。
アレンは何か思い違いをしてるのかもしれない。ほんの一瞬、Aが普通のどこにでもいる女の子に見えたのだと思う。そうでなければアレンはベランダの柵に腰掛けるAを見て顔色を変えて怒鳴ったりはしないし、訪れた気不味い沈黙に悲しそうな顔をしたりしない。
｢そうだ、期末試験終わるまで暫く帰りが遅くなるけど一人で大丈夫？｣
｢大丈夫に決まってるでしょ！ 任せてよ｣
｢君のそういう所が心配ですけど｣
良かった。ふ、と安堵の息が漏れていることに気付いた、Aは安心していたのだ。これでいい、あの妙な空気はもう何処にも無い。そう思いたかったのにじわりと汗ばむアレンのシャツが先程の出来事を明瞭に物語っていてAは思わず目を逸らした。痛い、喩えるならそんな空気だった。何度も名前を呼ばれ振り返った時にアレンは目の色を変え息を切らしていた、ただの思い上がりかもしれないが何となくAはそれが、焦りに見えた。身体の側面からちくちくと伝染するような緊張した焦り。
｢怒鳴ったりしてごめん、｣
｢えー、なんだそんなこと？ 急に真剣な顔するからびっくりして損した｣
｢失礼な！ 僕はいつだって真剣です｣
｢そうだね。でもわたしは、大丈夫だよ｣
何が大丈夫なのかなんてお互い初めから分かっていたはずだった。長く過ごせば過ごす程、記憶に残る強烈なコントラストや色彩が色濃く、褪せずに鼓動を刻む心臓に棲みついて駄目になる。これだけは絶対だと線引きされている境界線を、二人は忘れて交わろうとすることがある。黄昏時独特の妖しい雰囲気にあてられて、そうさせたに過ぎないのかもしれない。
｢冷えるから中に入ろうか｣
カエルの鳴き声を最後にベランダの戸は閉まる。確かに風は冷たくなったが、Aの声程冷たいものはなかった。
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月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい！暑いので熱中症には気を付けてくださいね！ (2018年5月19日 11時) (
レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます！ これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい！ (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか！？とっても可愛いです！このお話大好きです！ (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かがり | 作成日時：2018年3月30日 18時
