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澄みきった青が幾重にも線を描いている。ゆうらり、きらり。ゆうらり、きらり。銀を溶かしたような水底の色彩が、空を写したような水面がAの懐かしい記憶を静かに刺激する。なんだっけ、これ、なんで知ってるんだっけ。深く呼吸をすると瞳を閉じて慎重に霞んだ記憶の糸を手繰り寄せる、がアレンの声に瞑想を中断しざるを得ず止む無く顔を上げた。
｢実はこれ、君が絵に描いた場所なんですよ。廊下に掛けてあったんです｣
｢わたしが、描いた…………う〜ん、もしかして絵画コンクールかなあ｣
｢美術のティエドール先生分かります？ その人の推薦で出したって聞いたんですけど｣
｢あ、わかるよ！ 先生すごくめんどくさい人だけど、生徒思いなんだよね｣
わかる、知ってる。あれから毎日のようにみんなのそばにいたのだから。先生には白髪も皺も増えたし、少し窶れたように見えた。ぼろぼろに剥がれて錆び付いたフィルムの色彩は褪せて、いつの日かの輝きを失っているはずだった。それが今はどうだろう。霧が蔓延る記憶の奥底から色が、匂いが、感触がじわりじわりとAを包むように湧いてくる。
｢なんでだろう。みんなのこと毎日見てて、あんなに近くにいたのに、今まで全部忘れてた気がするの｣
不思議だった。ただ不思議なだけだった。信じてやまなった大切な記憶がいつの間にか上書きされたような気分だ。昼下がりを少し過ぎた頃、Aは唐突に自分と居場所とも言えるアレンの家に帰りたくなる。なんとも言えぬ焦燥感に背中を押されて来た道を引き返しながら改めてみんなのことは思い出せたのに、肝心の自分のことは分からず終いで申し訳ないとアレンに謝ると彼は少しづつ思い出そうよと笑う。
｢僕のこと、忘れないでくださいね｣
仮面のように取り繕った綺麗な笑顔は刹那に歪む。らしくもなく情けない顔と言動だとアレンは自負していた、きっと眉尻は下がり今にも泣きそうな顔をしていることだろう。もしかしたら泣いているかもしれない、それでもアレンはAに気付かれないようにと下手くそな笑顔を貼り付けた。
｢？ 大きい声で言わないと聞こえないよ〜｣
｢何でもないです。それより一人で先走って迷子になっても知りませんよ｣
｢それはやだ！｣
小さい点だったAは血相を変えてアレンの元に猛ダッシュすると隣に並ぶ。もうすぐ日が暮れる。
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月夜弥(プロフ) - かがりさん» はい！暑いので熱中症には気を付けてくださいね！ (2018年5月19日 11時) (
レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
かがり(プロフ) - 月夜弥さん» 初めまして、暖かいコメントありがとうございます！ これからもゆるりと更新しますので、しばらくお付き合い下さい！ (2018年5月19日 9時) (レス) id: d3d904e778 (このIDを非表示/違反報告)
月夜弥(プロフ) - アレン君まじ尊い…天使ですか！？とっても可愛いです！このお話大好きです！ (2018年5月13日 22時) (レス) id: 2435ed909b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かがり | 作成日時：2018年3月30日 18時
