第百六十八話「名前」 ページ8
誰かに殴られた痛みが、背中につきささる。
痛い。
熱い。
真っ暗になった世界に、僕は……私は、荒く息を吐く。
伸ばした自分の手が思ったよりも小さくなくて、まるで違う世界に引き込まれているように思えて
不安になった。
A「…ちかげ、く……」
伸ばした手、
それは、新選組の屯所の天井へとのびている。
思ったより、小さくなくて。
さっきまでのは夢だったのかと、錯覚した。
A「桜は……？千景君は…？」
おもわず飛び起きて、あたりを見るけれど、
ここはどうみても屯所の中だ。
戻ってきた、私の世界に。
思い出した、僕の世界を。
頭がいたい、吐き気もする。
不思議な気分だ。まるで、先ほどまで空を飛んでいたみたいに。
A「風間……風間………………千景、君」
彼の名前を呼ぶ。
彼の名前は…なんだっただろうか。
なんと呼んでいたのだろうか、私は…僕は。
A「風間…千景君…」
ぽつりとまた、名前を呼んで。
A「千景君、千景君…」
思い出したように、何度も名前を呼んだ。
さっきのは、夢じゃない。
私の……僕の、世界。
僕の、私の記憶。
A「千景君、千景君…っ……とめないと」
外は真っ暗。
でも、そんなことは関係なくて。
混乱状態の私は、無我夢中に刀を持って、立ち上がった。
すると、
ぐらりと目の前が回る。
A「っっ！？………ゲホッ、ゴホッ…！！」
何か喉からこみ上げてきて、
私は倒れるように壁にもたれた。
A「…ゲホッ………な、に…？」
体に異変がおきている。
『もう、時間がない』
体が、そう言っている。
A「……駄目」
だれに向かってだろうか、
そんなことをどこかに向かって、小さく吐き出す。
A「駄目……彼に、つたえないといけない」
刀を杖のようについて、歩き出す。
ふらふらする。
目の前が、かすむ。
でも。
A「彼に、……千景君に」
首をふる、足を、動かす。
A「……私が、いるって……伝えないと」
僕の記憶の中の彼は、最後に泣きそうな顔をしていた。
私の最後の記憶でもそうだ。
だから彼に、つたえないと。
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前田のさぶ(プロフ) - 初めてこんなに感動しました、とても切なくていいお話で涙が止まらなかったです。夢小説でこんなに感動したのは数年で初めてでした本当にありがとうございます！🥲お疲れ様です😌😌 (2022年8月31日 11時) (
レス) @page36 id: aeb32198b3 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 最高から一気に読ませていただきました。このような最高な作品を作ってくれてありがとうございます！本当に涙が止まりませんでした。本当にありがとうございます！何度でも読み返していきます。 (2021年7月16日 4時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 最高でした…。 (2021年3月18日 22時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
彗羽(プロフ) - 泣きました。とてもしあわせな作品をありがとうございます。アニメにそうのではなく、オリジナルの展開がたくさんあって、本当に楽しく読ませていただきました。また、読みます。何度でも読みたくなるお話でした。 (2018年12月16日 13時) (レス) id: 3386061a83 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最初から読ませていただきました！ほんとうに素晴らしい作品です！！ありがとうございました！ (2018年8月9日 17時) (レス) id: 534d1c515e (このIDを非表示/違反報告)
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