42p-クッキーと違和感 ページ12
、
、
夜が差し掛かった夕刻頃に、彼女の住む高層マンションへ出向いた。久々という気持ちを密かに感じながら中へ入る時、身に覚えのある金色に灰色を少し混ぜたような色をした彼が居た。少しあれ、と思いながら声をかける
「あれえ、久しぶりじゃん。元気ー?」
「あ、……はい。」
相変わらず俺に対しては元気の無い様子。何時もだったら結構引き止めるけどなんか今の俺の置かれてる状況はあんまり心地がいいものじゃなかったから少しの差異感を持ってAの部屋へ向かった。
ほんの出来心で玄関を無断で開けてみると隙間からにゃー、と膝に顔を擦り寄せてくる猫が。
あれ、猫なんか飼ってたっけ。と思いつつも奥の部屋に届くように声をかけようとすると壁から覗くようにしてAが顔を出す
「お、臨ちゃん」
そこでまた、俺はなにかちょっとした違和感を感じた。
「あーうん、久しぶり。ていうか…」
「ああ、この子ね。同居してんだ。なんでかって言うとーーーーーま、上がって」
「おっ邪魔しまーす」
と言いながらグレーのふさふさとした毛並みが美しい猫を抱き上げると、何故か全目的に前足と後足を顔に立てつけられた。何故かしら面白がっている様な気がして、此奴はAに少し似てるな。なんて馬鹿げたことを思う。
「猫を飼い始めたり珍しくクッキーまで作っちゃってーなんか目覚めちゃったの?」
なんて冗談交じりに洗い場で食器の水事をしている名前に向けて話す。折角なのでそのクッキーを摘んでやろうと手を出す。そしてそんな悪行を無愛想に見ている猫。ちなみにソファーの反対側の縁で不機嫌な王様のようにドーンと座っている
一通り洗い終えたのか手をタオルで拭きながら俺の座っているソファーへ向かって来る。
「嗚呼、それはお礼で作ってみたんだ」
「お礼?」
「うん」
「誰の?」
まさか俺にでは無いだろうと思いながら話を聞く
「紀田の」
「…へえ、さっき来る時会ったよ。」
「あーだと思った」
摘んでやろうと手を出したクッキーも食べる気が失せて元の場所へ戻した。
俺じゃない奴のために作ったクッキーの残りを食べるだなんて流石に滑稽が過ぎた。
多分今片付けたのはティーカップだろうなんて要らぬ予想を立てる。
「それで、前振られてーーー、」
、
、
15人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
戓乃(プロフ) - 欺きにゃんこさん» ギャー滅茶苦茶嬉しいです、有難うございます…!逆に分かりにくくなってないかが最近の悩みです(´///// ` *) (2018年7月4日 15時) (レス) id: 7358168600 (このIDを非表示/違反報告)
欺きにゃんこ(プロフ) - とてもお話が凝っていて 面白いです。 続き待ってます (2018年7月4日 14時) (レス) id: 57e8984140 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:乃 | 作成日時:2018年5月24日 6時