俺がおまえを塞いだ理由【瀬名泉】 [完結]

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呆けるアホヅラがなぜか今の俺には最高に頭に来た。
理由なんてひとつしかないのに。想いをこんなに募らせているのに。
こいつはただ信じられない、という顔で俺の服の端っこを引っ張り続けるのだ。

「でもまぁ……そういうのも含めて、好きなんだよねぇ」

「……まじ？」

お前だってちょっとマニアックな趣味を持っている癖に。
引いてるんじゃないよ、このクソガキ。

▽
腐
夢主：佐直湊

書き直しました。

.

どんな女の子が好き言われたら、俺はツンデレっぽい女の子かなと答える。
そんな彼女としたいことはと言われたら、ピュアにキスをしてみたいと答える。
これは相手が女の子である場合のみの話で、相手が男の場合はまったく通用しないと考えてくれて構わない。
むしろ、まったく別のものだ。

「空き教室に年下呼び出して……嫌がらせにキスですか」

「はあ？」

「俺のことどんだけ嫌いなんですか先輩」

腰に手を置いてため息をつく。
そう、俺は空き教室に瀬名先輩という人に呼び出されたのだ。
恐ろしい先輩であるから断れるわけもなく、しぶしぶ今回は足を運んだ。
扉を開ければすぐ壁際に追いやられてキスをされた。
恐ろしくなり突き放せば、瀬名先輩はいたって普通の表情。

俺がおかしいのか？

「はあ？　ちょっと待ってよ。俺があんたのこと、嫌い？」

「そうでしょ」

「なんで？　キスをいきなり仕掛けたから？」

「はい」

意味がわからねぇと眉が語っていた。
目がおまえ頭おかしいだろと訴えていた。
手が喋れなくしてやろうかと握り締められていた。

俺のビジョンが過激なのかもしれないけど、瀬名先輩はご立腹だ。
腰に手を当てて、ジャージを着た瀬名先輩のカードみたいな感じ。
見るだけは可愛いけど、実際やられると怖いものだね。

「俺が嫌いだから嫌がらせをして、後生のトラウマを植え付ける気だったのでは？」

「あんたの中の俺どんだけ性格悪いわけぇ？？　ちょ～うざい！」

決めゼリフを吐き、やれやれと首を振った。
どうして俺が首を振られなきゃいけないのか、まったく頭が理解できない。

瀬名先輩は俺の肩に軽く手を置き、仕方ないんだからぁとつぶやいた。

「あのねぇ、好きな子がバスタオル一枚で歩いてたらどうする？」

「ブレザーぽいって投げ捨てて、『風邪引いちゃうからこれ着てて』ってかっこつける」

「そういう感じ…じゃないね全く。あんた本当いや。そういうとこも好きだけど」

「は？」

「だからね、」

肩に乗せられた手に力が込められた。
自然と瀬名先輩の顔も、俺の目と鼻の先の距離に近づく。
さっきキスをされたから、またされるんじゃないかと思ってしまうのは仕方がない。

「俺はね、あんたのこと好きなんだよ」

「……は？」

まじかよこいつ。
ついに遊木を捨ててガチの男好きになってしまったようだ。
俺のほうを見て笑っている。きっと今日は雷が都心のほうで落ちるだろう。

瀬名先輩はまた俺の唇に自分のものを重ねる。
しっとりとしたふにゃっとした、柔らかいものがあたっている。
可愛らしくきゅっと目を瞑ることすらできず、俺はその場に呆けた。
目の前で手を振る先輩への反応すら、頭の理解が追いつけずできない。

「でもまぁ……そういうのも含めて、好きなんだよねぇ」

「……まじ？」

ガチの顔に俺は引き気味。
それを見て瀬名先輩はとりあえず満足そうに頷いた。
大方思っていることはわかるけど、これから言うこともなにかわかってきたけど。
後ろに後ずさってもどうせ逃げられない。
俺はこの変態ホモストーカーから逃げられないのだ。

「おまえの口を塞いだ理由(わけ)は、あんたが好きだから」

「…」

「ちょっとクソガキ。理解してよねぇ」

もう一度俺の口に先輩の口を重ねると、瀬名先輩はひらひらと手を振って教室から出て行ってしまった。
ひとり空き教室に残された俺は、唇に手をそっと当ててシンキングタイム。
付き合うべきか、女の子とイチャイチャすべきか…。

どのみち女の子とイチャイチャしようとしてもあの人が阻止してくるはず。遊木への対応で重々承知した。
つまり逃げ場はひとつしかない。付き合うという、最悪な逃げ道。
振ったってあの人は絶対ついてくるだろうしね。無駄なんだ。

「……あー、教室なんか来なきゃよかったぜ…」

目元を手で覆って隠しても、後の祭り。
残念ながらすべて瀬名先輩の思い通りにことが進むのであった。

▽
ちゅーするだけの小説

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