家族 - 占い・小説 / 無料

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:326 hit

犬夜叉

ほんのちょっとミロサン？うすいです

すうっと、青い空を紙の物体が飛ぶ。

「かごめ、それはなんじゃ」
「紙ヒコーキっていうのよ」
「紙ひこうき……？」
「んー、本物はね、たくさんの人を乗せて空を飛ぶのよ。それに乗っていろんな所に行けるの」
「かごめ様の国はすごいですな」
「本当。あたしは想像すら出来ないよ」
「いろんな所に行くのか？」
「そうよ」
「おとうの所にも行くかのぅ」

目を輝かせて言う七宝に、かごめは優しく笑った。

「七宝ちゃんも、つくってみる？」

「七宝、まだ出来ぬのか」
「今やっとるところじゃい」
「そうだよ法師様、急がせちゃだめだよ。七宝、ゆっくりで良いからね、心をこめるのが大事なんだよ」
「うむ」

法師様行くよ、と珊瑚が弥勒の腕をとる。
2人の話している声を聞きながら、七宝は紙に向かい筆を取る。

『せっかくお父さんに飛ばすんなら、手紙を書いたら？』

かごめがそう提案し、すぐに七宝、そして珊瑚もそれに飛びついた。

「おとう、おら……」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

おとう、おらは元気にしてる。おとうがいなくて悲しむ暇が無いくらい、忙しいのじゃ。

犬夜叉というやつがおってな、乱暴で大馬鹿者なのじゃ。気に入らないことがあると、すぐにおらを殴る。短気でほとほと困っておる。けど、戦の時は守ってくれる。そういう時の犬夜叉は、頼もしくてな、安心するのじゃ。おらの、兄みたいなものじゃ。

犬夜叉は強いけど、かごめには頭が上がらん。かごめは遠い国から来て、おら達の知らないことをたくさん知っとる。おら達妖怪にも普通に接して、おら、かごめが大好きじゃ。かごめは、姉じゃ。

かごめの他にも、珊瑚という女子がおる。珊瑚は女子なのに退治屋で、本当にすごいのじゃ。それに珊瑚は薬草とかに詳しいし、思ったことをちゃんと口に出す、強い女子じゃ。おら、珊瑚に何度も怒られた。おかあみたいだ。

あとは、弥勒じゃ。弥勒なんて名前じゃが、とんだ生臭坊主じゃ。すぐに女子を口説く。それで珊瑚もおらも何度も苦労しておる。けど、弥勒の右手は何でも吸いこむ穴があって、中々苦労しておる。それに弥勒の背中は大きくて、温かくて、何だかおとうみたいだ。

おとう、おらは元気です。おとうみたいな、立派な妖怪になる。だからおとうは、安心して、見てれば大丈夫じゃ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「七宝、書きおわった……法師様、しっ」
「珊瑚？」

珊瑚の肩ごしから覗くと、七宝が筆を持ちながら机に突っ伏しながら寝ていた。

「まだまだ子供ですなぁ、どれ。何を書いたのか」
「ちょ、法師様」

珊瑚が七宝を抱き上げ、弥勒が七宝の頭の下敷になっていた手紙を読む。

「……この野郎」
「法師様？」
「お前も読むか、珊瑚」

一瞬ためらった後、弥勒が持つ手紙を読む。

「七宝……」
「まさか七宝がこんな風に思ってくれているとはな」
「そうだね、法師様」

血は繋がっておらず、種族すら違うのに。
目の前の小さな子狐が、愛おしい。

「それにしても、私が父親ですか。照れくさいものだな」
「それを言うなら、あたしだって。母親だってさ、あたしが」
「そうなると珊瑚、七宝が子どもで私達は夫婦だな」
「……だから？」
「いや、嬉しいものだなと」
「どーせ他の子の名前があってもそう言うんだろ、この生臭坊主」
「おやおや」

七宝を起こさないよう、小声で小気味よい会話を繰り広げる。

向こうで、犬夜叉とかごめが手を振っている。
いつもの日常。
でもいつの間にか。

「ねえ、法師様」
「なんですか」
「あたし達、生まれも育ちも、全部ばらばらだけどさ。家族って、言っても良いのかな」
「そうですね」

弥勒は幼い頃に父を亡くした。母は既にいなかった。
珊瑚は奈落との戦いで家族や里の仲間を失い、琥珀は敵とともにいる。
犬夜叉の母は死に、兄の殺生丸とは仲が良くない。
かごめはここの人間ではなく、自分の世界に家族がいる。
七宝は父を亡くしている。

みな、ここに家族がいなくても。

「私にとっては、みな、大事な家族ですね」
「あたしもだ」

ホムペを作る｜感想を書く
 他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って！｜面白い！→ )