大事にするから

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:1,141 hit

こんなことになるとはあの時考えてもいなかった。

大野と櫻井2人の収録後、スタッフと共演者への挨拶を済まし、2人の楽屋へ戻ると珍しく大野が帰り支度を早々に済ませ

「翔君、お疲れ様」

「智君、何か用事？」

大野が楽屋に着いてすぐに帰り支度を済ませ、櫻井よりも早くに出るのは珍しい。

「うん…………まぁ」

「そうなんだね。お疲れ様」

言い淀む大野を見た櫻井は引き止めることはできず、代わりに笑顔で挨拶を返した。

「じゃあ翔君、また収録で」

櫻井を見ることなく携帯片手に楽屋を後にする大野を櫻井は見つめ、大野が楽屋から出たのを確認すると深く溜息をついた。

「帰り支度を早く済ませて、何か用事があって、携帯片手に出て行くなんて…………誰かとの約束だよなぁ」

櫻井は再度溜息を吐くと、携帯を鞄から出し電話を掛けた。
電話の相手は、櫻井からの電話であれば仕事中でない限り、2コールあるかないかで出てくれる。また、櫻井は相手の仕事の日程は全て把握しているため、2コール以上も待たされたことはない。

「もしもし、翔さん？」

「ニノ……………」

「今日はおじさんとの収録だったんじゃないの？」

「そうなんだけど、智君はやっぱり俺のこと…………」

「翔さん、自信持ちなって言ったじゃん。おじさんと付き合ってるのは貴方なんですよ？」

電話の相手はメンバーの二宮である。
二宮の言うように櫻井と大野はつい先日から付き合い出したのだ。もちろん、櫻井からの告白の末であり、永年の片思いに終止符を打ったのだが、櫻井は大野から愛されている自信はなく、片思い中の相談相手であった二宮を頼っているのだ。

「うん………。でも、智君収録終わったらすぐに帰ったんだ。前だったら、少し話したり一緒に帰ったりしてたのに」

「翔さん、今楽屋？」

「うん。まだ楽屋だよ」

「待ってて」

「え？…………もしかして、ニノ」

「迎えに行くよ」

櫻井はハッとした。二宮は現在映画の撮影中であり櫻井とは違った意味で忙しいメンバーである。

「ニノ！いいよ！1人で帰れる！」

「翔さん？俺、前にも言ったけど、泣いてる翔さんを1人にできるほど、非情な男じゃないんだよね」

その言葉は櫻井が大野付き合う前に二宮と飲んでいる最中、飲みすぎた櫻井が泣き出した時に二宮が櫻井へと掛けた言葉である。
黙る櫻井に続けて二宮は言う。

「翔さん、迷惑じゃないから、お迎え行ってもいいですよね？私も翔さんに会いたいんですよ？」

そんなに甘えたことを言われると櫻井は弱いこと二宮は熟知している。妹に年の離れた弟がいる櫻井は根っからの長男気質なのだ。
無言は肯定と受け取った二宮は

「翔さん、楽屋で大人しく待っててくださいね」

優しくそう言うと、電話を切り出発の準備にかかった。

ホムペを作る｜感想を書く
 他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って！｜面白い！→ )