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一松とおそ松がデートする話。
人を待つということはどうしてこうも苦痛に感じるのだろうか。あちらこちらから出てくる人影ひとつひとつが待ち人なのじゃないだろうかと思ってはやっぱり違ったとなればいちいち落胆する。それでいて後から来た当の本人はさほど反省の色を見せることもなく、「ごっめーん!待った〜?」と笑顔ひとつで片付けてくるのだから、つくづく割に合わない、と思う。おれ、松野一松は、念願の松野おそ松とのデートを取り付けて、今日がその当日なのだった。約束の時間より30分遅れてそれは始まりを告げたのである。こんなことなら家から一緒に出てこればよかったって?それじゃあデート感が台無しというものだ。約束の時間に所定の場所で落ち合う。これぞデートというものだ。こだわりがすぎるだろうか。「で、どこいこっか?」そう、おれたちは会う時間と場所はバッチリ決めてきたというのに、肝心のその後の予定は全く無計画の空白だったのだ。行く宛てがなかったわけではない。むしろ、ありすぎた。おそ松とならどこにでも行きたかった。行きたい場所が多すぎて絞りきれなかった、というのが正確だろうか。そんなことはおそ松は露知らず、だろうが。「どこへでも、いくよ。おそ松兄さんの行きたい場所あるならそこへいこう」おれはぎこちない笑顔を浮かべてそう答えた。「そっか。じゃあ二人でしか行けない所、行こう」予想外に良い考えを返してきたのでおれは焦ったが、期待は大いに膨らんだ。どこへ連れていってくれるのだろう。「あっ、いっけね。チョロ松じゃないんだった。あそこは無理だな…」バツの悪そうにそう言うおそ松は一体おれをどこに連れていこうと考えていたのだろうか。チョロ松兄さんとは一緒に行けて、おれとは無理なその場所におれは行ってみたかったなと、自分が自分であることを少し悔やんだ。「じゃあとりあえず、お茶でも飲む?トッティおすすめのいい店があるんだ」
「お茶でも」と言いつつ実際に飲んだのはタピオカミルクティーだった。本当は座ってゆっくり話しながら何か飲みたかったがトッティおすすめの店がまさかタピオカの店だとは思わなかった。そして、タピオカとは、こうも長蛇の列に並ばないと手に入らないとは思わなかった。並んでいる間、おれたちはいつもと変わらない他愛もない会話を交わした。やれ何松がどうだの、最近の両親のおれたちへの当たりが強いだの、季節・天気の話、この前食べた・飲んだアレが美味かっただの、その他は忘れてしまったが、あたかもなるべく話が途切れないようにしようと、おそ松はずっと何かしら話題を振ってくるのだった。沈黙が耐えられない関係。おれは兄弟であるにも関わらず、未だにおそ松から気を遣われる存在なのだと悟った。おれは沈黙の間も楽しみたいと思う人間だったから、終始何か喋っているのは正直疲れた。けどおそ松との距離はより一層縮まった気がして嬉しくもあった。タピオカをゲットした後には、公園まで歩いて、ベンチに座り、タピオカの味を純粋に楽しんだ。おれはトド松から教えてもらっていて氷なし、甘めの黒糖味を選んだが、おそ松は店員に勧められるがまま、氷ありのスタンダードな味のものを飲んでいた。「お前のはどんな味?交換しようぜ」おれたちは当たり前のようにお互いの飲みかけのタピオカを交換して間接キスをした。と思っているのはもちろんおれだけだろうが。こういう、ささやかだが恋人のようなことを普通にできてしまうことに特別さを感じてしまうのは異常なのだろうか。「あ、そろそろ返してくれる?それ」思いのほか長くおそ松のタピオカを占領していたみたいだ。慌てておれは自分のタピとそれを取り替える。交換する前と比べて減りに減った残り少ないタピオカをちびちびと飲んで、話題は、次はどこへ行こうかという話になった。
結局おれたちは「ここから近いから」という単純な理由で、ショッピングモールにやって来た。男二人で買いたい物など何もないが、おそ松は結構乗り気で、今身につけている服とどこが違うか分からないようなデザインの服を次々と手に取って「これ、似合うかな?これは?」とおれに意見を求めてくる。正直どれも変わらないと言いたいのを抑えて「似合ってるよ。それもいいと思う」と無難な回答をするに留めるよう努めるのだった。しかし、これもおれに気を遣って場を盛り上げるためにわざとそう振舞っているのだとしたら、おれは少し傷つくだろう。
結局あんなに長丁場のウインドウショッピングをしたにもかかわらず、おれたちは何一つ商品を買わずにショッピングモールを後にした。まあこれも、買い物あるあるか。その後おれたちが自然と向かってしまったのはここらで唯一のラブホテルであった。本当は最初から1番おそ松と来たかった場所…と、おれは内心喜んでいたが、おそ松は気まずそうだった。「あ、あれーっ?俺たち、なんでこんなところに来ちゃったんだろうな」と言いながらも、最初に、「二人でしか行けないところ」と提案した時に思い浮かべていた場所がここであることを打ち明けてくれた。おそ松は、チョロ松とはよくここへ来ているのだろう。おれはちょっと、というよりかなり、嫉妬した。しかし、何はともあれおれたちは、せっかく今ラブホテルの前にいるのだ。この絶好のチャンスを逃すまい、とおれは勇気を振り絞っておそ松に言った。「おれ、おそ松となら、いいよ。その、一緒にココ入っても」
なんとか一緒にラブホテルに入ることができたはいいものの、それからおれたちはどうしていいか分からず、時間だけが無為に過ぎていっていた。でも、ここに来たからには目的はただひとつ。おれはおそ松とセッ〇スがしたかった。それは、おれの長年の夢でもあったからだ。「じゃあ先にシャワー浴びてくるよ」
シャワーを浴びている間、背徳感に苛まれていたかというとそんなことはなかった。兄弟で6つ子であるにも関わらずこんな行為をしてしまうなんて、きっと普通なら(まあおれたち以外に6つ子なんていないと思うが)後ろめたさに押し潰されてしまうだろう。だが幸い(?)おれは普段からカラ松とこういうことをやっていて慣れていた。おれはカラ松のことを何とも思っていないが、向こうの押しが強かったので断りきれずダラダラと関係を持ち続けてしまっている。しかし、勘違いしないでほしいが、おれが本当に好きなのはおそ松ただひとりだ。今日、おれは初めて、好きな人とセッ〇スすることができる…嬉しさが込み上げてくる反面、緊張もしていた。
おそ松もシャワーを浴び終わって、その後おれたちは思いもよらないことで揉めた。それは…どちらが受け、攻めをやるかということだった。おれはどうしても、おれこそが、おそ松の処女を頂くつもりでしかいなかったが、おそ松は、受けをやったことがない不安からか、そこはなかなか譲らなかった。おれは半ば強引におそ松をベッドに押し倒すと、おそ松はいよいよ顔を赤らめ、抵抗する素振りを見せなくなった。「かわいい…」思わず漏れてしまった心の声と、おれの中での男スイッチが入ったのはほぼ同時だった。深い口づけを交わし、おそ松の吐息に熱せられたおれはさらにおそ松を欲した。全てを奪い去りたいくらいにおれはおそ松を愛していたのだと自覚する。おそ松は、口ではやめろ、と言いつつも身体は正直でおれの愛撫にわかりやすく応えてくれた。ついにこの時がきた、おそ松の処女を頂く時が…!と悦に浸っている間になんと、時間がきてしまった。おれたちは微妙なタイミングでラブホテルから出なければならない羽目になったのだった。それでもおれは満足していた。まず、今日おそ松とこういうことができるとは思ってもいなかったからである。そして、チャンスは今日だけではない。またおそ松を誘ってここへ来よう、とおれは決心したのだった。
帰り道はなんとなく気まずかったけど、終始おれたちはなんとなく手を繋いでいた。その温もりを満喫するのに言葉など何もいらなかった。「楽しかったよ。ありがとう」おれがそういうと、おそ松は照れ臭そうに「俺も。まあまさかお前とあそこに行くことになるとは思ってなかったけど」と答えた。家に着く直前に、他兄弟に見つかってはまずい、と慌ててお互い手を離したのは言うまでもない。おれにとっての人生初のこのデートはそこそこ成功を収めたと言っていいだろう。次への改善点はあるが、それは次のデートを取り付ける理由ともなり得るのでこれはこれでよかったと思う。次はいつおそ松とデートができるかな。早くも未来を想像してうきうきしている自分がいるのだった。

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作者名:aori | 作成日時:2019年11月27日 15時

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