どうやら文豪さんは病んでしまったようです。

23種類の結果パターン

今日は誰が病んでしまうのでしょうか………？ - 2024年5月6日

……最近、僕の鼓動は“彼女”の側にいる時、やたらと速くなる。



鼓動のことだけじゃない。

あらゆる行動に目を奪われるし、他の人間と話していると嫉妬する。

実験を重ね、検証した結果──僕は、これが世間一般における“恋”というものだと考察した。

恋なんて、脳が人間の生存本能に従って作られる現象に過ぎない、そう考えていた。人間という理性を持った存在であるというのに、本能に動かされるなんて！愚かなことでしか無い、そう思っていたのに。


それでも僕は。



どうしてこんなにも彼女が恋しくて、欲しくて堪らないんだろう？



＊＊＊


……ところで、科学の根元はいつだって疑うことにある。そういう風に僕は考えている。

そして実験をせず導きだされた結果が信用ならないということも。

要するに、疑問があるならばそこに実験は欠かせないのである。


そう、例えそれが──





──人体実験、だったとしても。



「……だからって、何で私に対してこんなことを……！？」

僕の前にうずくまった彼女が叫んだ。どうやら僕の動機が理解できないらしい。まあ、折角だし説明するとしよう。

「理由？ ……どうやら僕は君に好意、というのを抱いているらしくてさ」



「……は？」

……彼女は何故か、目を点のようにし僕を見る。何故こんなに驚いているのか気になるが、とりあえず今は説明を優先しよう。


「僕のような生まれながらの科学者が恋なんて理性的でないことをするなんてね！ 驚いたよ……


……ならば僕の想いが本当に勘違いでないのか、色々と実験してみよう。そう云うことだよ」

「何云って……」

嗚呼、どうやら彼女はまだ理解に及ばないらしい。具体的に説明した方がいいかな？

思わずクスリと笑いをこぼし、僕は言葉を続けた。

「手順は簡単だ。



……僕が好意を持っている筈の君に対し、危害を加える。そしてどれくらいのタイミングで僕自身が耐えられなくなるか。それだけだ」

「…………え？」


おや、僕が折角彼女にも判るように説明をしたというのに、まだ彼女は理解しない。

残念だけど、僕は気は長い方じゃない。こうなったら、






「──じゃあ早速、実験をしようじゃあないか！」


そして、僕は近くにあったメスを手に取った。

「っ……！？ いっ、いやっ……！！」


……漸く彼女は僕のしようとしていることに気付いたらしい。嗚呼、でもね。



「……もう、遅すぎるよ」

次の瞬間、僕の眼前で鮮血が舞った。

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