【歌lいl手】非日常的な恋愛事情【日替わり】

6種類の結果パターン

非日常を。 - 2024年5月5日

初恋は、濃いめのココア＊そらる

side.そらる



「こんにちは、今日もバイトですか？」

そ「そうです、ご注文は」

「ココアで」

そ「かしこまりました」


毎週金曜、5時半になるとやってくる彼女


いつもココアを頼んで、読書しながらその1杯を飲んで帰っていく


カウンターの端、この時間の特等席になってる彼女の座る席は窓の光がさして眩しいはずなのに、毎回同じ場所で本を読んでいる


そ「…ココアになります」

「ありがとうございます」


この、店員とお客さんとして広げる会話がもどかしかったり、もっと話したいとか色々考えてしまって


…俺も、恋してんだな



それからも、彼女は何度か店に足を運んでいて



年上の大学生、花咲さん

卒論に追われる4年


そう毎週のちょっとした会話で確認した



3月の中旬、就職先が決まったんだ。といつものように優しい声で話す


そ「そうなんですね、どういう会社ですか？」

「そうだなあ…、…ちょっと遠いところ？」

そ「…」

「ふふっ、動き止まった」


動きも止まるよ、そりゃ


「大阪に本社がある会社なんだけど、そっちに入れることになってね」

そ「…そう、だったんですか」

「そう、一ノ瀬くんなら言ってもいいかなって初めて家族以外の人に話した」

だから、いきなりお店にこなくなっても心配しないでね？



そんな優しい表情をみせられたら、はい以外の言葉は出ませんよ


そ「…わかりました、…頑張ってくださいね」

「うん、一ノ瀬くんも大学の進学頑張ってね？」

そ「はい」



それから彼女が来なくなるのは早かった



次の週にはいつもの時間には店に人はいなくて



更に数週間程たった頃


大学が休みで朝からバイトに出てた日だった


お昼になっていわゆるOLさんが店に入ってきて、注文をとったあとカウンターに入ると聞こえる言葉


　「そういえば、花咲YOUって子いたじゃん」

　「〇〇の大阪にある本社行った子、だっけ、つい最近知ったんだけど」

　「その子ね、結婚したって」

　「嘘ー！え、誰と付き合ってたの」

　「ほら、何年か前の医学部のエースのさ」



途中で俺の脳は処理を諦めたみたいで頭は真っ白だった


…本人じゃないと信じたくて


でも、時期だって名前だって会社だって



…家族以外の人、って、その時には、もう



そ「…お待たせしました、オムライスになります」


脳裏に浮かぶのはあの優しい笑顔で




…知らないような、フリをしてもいいですか

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