【歌い手】シェアハウスでの非日常。

14種類の結果パターン

YOU―…非日常も、よくない？ - 2024年5月11日

＊しゃむおん＆天月＊

『わぁー、しゃむくん上手！やっぱり上手ー！』

天月くんとしゃむくんと私でカラオケをする、録音室。

「えへへ、ありがとう」

私が拍手をすると、さっきまで歌っていたしゃむくんが照れ笑いをした。
隣に座る天月くんもすごく楽しそうに笑う。

「次の曲何〜？」

しゃむくんが天月くんに尋ねた。
天月くんは予約確認リストを開くと。

…顔を、固まらせた。

彼は、キョトンとするしゃむくんや私に苦い顔をした。

「…忘れてた、コレ、設定外さないと必ず10曲目に“竹取オーバーナイトセンセーション”入るんだった…」
「『あ！！』」

…そう。
シェアハウスのカラオケにだけついている謎な機能。
それは、設定をはずさないと必ず10曲目に、ランダムでデュエットの恋歌が入ることである。

しかも、演奏停止はできないという恐ろしく悪意のあるもの。

かつて、灯油さんが設定をはずしわすれて一人二役で歌ったというあれだ。
そのときの様子をこっそりのぞいていたらしい店長が、そっと教えてくれた。

そのあたりからすると、おそらくその機能をつけたのは店長であろう。

そして、今日3人そろってその設定を外し忘れてしまったのだ。

3人で顔を見合わせる。

…歌うしか、ないのか。



――――…すると、唐突に天月くんが。

「じゃあYOU。俺と歌おうか」
「『えっ』」

目を見張る。
天月くんは、“駄目かな？”なんてさわやかに笑って。

…いっ、いや駄目なはずはないんだけど………っっ！

すると、…しゃむくんが、しっかりとした声で。

「……今回ばかりはダメ。…僕と歌おう、YOU？」
『ええ！？』
「―――…へぇ？」

またもや目を見張る私。
天月くんが面白そうに小首をかしげる。


―――――…曲の、ハイテンションな前奏が始まった。




「――――…俺と歌おう？恋の歌、だし」



にっこり、あくまで爽やかに、けれど瞳の奥に熱っぽさを輝かせた天月くん。


「…恋の歌だからこそ、…YOUと、歌いたいんだ」

顔を赤くしつつも、まっすぐに私を見つめてそう言うしゃむくん。


前奏は始まっている、曲はもうすぐ。


…ああ、こんな贅沢で究極の選択。

私は、どちらを選べばいいの？

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