もしもあの文豪が文ストにいたら……！？

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この世界の「可能性」 - 2024年5月14日

「『神』は如何なる目的で我らに『死』を与え給うたと思うかい、梶井君？」


梶井の目の前で、虚ろな瞳の男がニヒルな笑みを浮かべた。
彼、フィリップ・K・ディックもまた、梶井と同じく「神」と「死」を探求する科学者であった。梶井は志を同じくする者にこう答えた。


「それには先ず、『神』が如何なる目的で我らに『生』を与えたのかを知る必要がある。偶然生まれた人類を消す為に死なせるのか、はたまた完璧な生命を作ったつもりが、死という不具合が生じていただけなのか？」


「わはははは！科学者じゃなくて哲学者みたいだな！」


「大して違いはないと思うけれどなァ」


ディックは始終虚ろな目をしていたが、顔は随分満足そうだった。


「キミと話せてよかったよ！実りある対話ができた！」


「うははっ！僕も、ディック殿の考えに刺激されたよ！」


ひとしきりけらけらと笑った後、ディックは梶井に尋ねてみた。


「……では、改めて問おう。ボクは生きているのか？それとも死んでいるのか？はたまた、未だ生命として完成していないのか？」


梶井はディックを見た。
つい先日まで科学技術班の下っ端として働いていた男の姿形をしていたが、中身は確かにフィリップ・K・ディックその人であった。


「生命体としては、確かに生きている。ただ、貴方が利用する前の、あの下っ端くんとしての貴方はもう死んでいる。『記憶を改竄する異能』と『異能の継承』を用い続けることにより、ディック殿の人格は、人類ある限り永久に生き続ける」


「なぁるほど……結局、キミもそこに落ち着いたんだね。ボクもだよ」


ディックはただ、奇妙な薄笑いを浮かべるばかりだった。

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