【日替わり】文ストキャラの香水付けてみた

6種類の結果パターン

あなたの本日の占い結果です - 2024年5月4日

【芥川龍之介】

「…可笑しな匂いがする」

芥川さんは部屋に入るなりそう言った。

「『可笑しな匂い』ですか？」

「…嗚呼」

『ケホッ』と小さな咳をして、芥川さんは私の隣に座る。

「あ、それもしかして私かもです」

心当たりが背中を掠めて芥川さんと少し距離を取る。

「…お前がか？」

「はい、今日は香水を付けてるんです。もしかしたら…」

と言って私は席を立ち上がる。

「それのせいかもしれないですね。咳が酷くなる様だったら、私は別の部屋で作業します」

作業机の上に広げてある書類を乱雑に抱いて部屋から出ようとする。芥川さんの咳が悪化したなんて事になったら、私は絶対樋口ちゃんに怒られる。確か隣の会議室は誰も使って無かった筈だと思い、扉に手を掛けようとした途端、凄い勢いで黒い何かが私の横を横切った。

「…どこへ行く？」

「…いや、あの。予告無しに『羅生門』を使うのは止めてもらえませんか？」

私の耳スレスレを通り抜けた羅生門は扉ギリギリで止まり、幸い被害は無かった。

「どこって、一応隣の会議室に…」

「その必要は無い」

それだけ言うと、羅生門が私の襟を引っ張り、結局私は元居た席に座らされる。凄い、そんな繊細に力加減出来るんだ。私のスーツの襟は破けてもいないし切れてもいなかった。

「あの…」

「別に、居ても構わぬ。僕の咳が止まらぬのは、先刻まで海風に当たっていた故…」

そう言ってまた咳をする。

「でも先刻、『可笑しな匂い』って…」

「…言葉の綾だ」

「本当ですか？」

『ぷぅ』と頬を膨らませると、フッと笑われた気がした。

「…まあ、あながち言葉の綾でもない。僕は柑橘系の香りは好まぬ」

口を抑えながら放たれた一言に、サッと青ざめる。

「ご、御免なさい！私、柑橘系の香水…っ」

再び芥川さんから離れようとすると、今度は羅生門では無く芥川さんの腕に止められた。

「だから良いと言っている。一度で覚えろ」

そうは言ったって、

「…御免なさい。お店で嗅いだ時『芥川さんみたい』と思ってつい買ったのに」

すっかり柑橘系がダメな事を忘れてしまっていた。

「…待て、僕を模して買ったと言うのか？」

「…はい、でも御免なさい。私忘れてて…」

そう言った私の体は、芥川さんに後ろから抱き締められていた。

「あ、あの…っ」









「…これ以上、僕の前で可愛い事をしてくれるな…」









苦しそうな声が、私の心臓を締め付ける。

首筋に埋まった髪が、こそばゆかった。

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