5種類の結果パターン

大好きと言えるまで、あと何秒……――――？ - 2024年5月5日

「そらるさーん」
「ん」
「構って！」
「無理」


きっぱり言い切って、終始目を離さなかったパソコンに意識を持っていく。


久しぶりに休みがもらえた私は、彼氏であるそらるさんの家へやってきたのだけれど、
彼は納期が近い仕事が残っているらしく、先程からずっとこの様子。

何度名を呼んでも一向にこちらを見ようとしない。


ちょっとだけでいいのに。
目を合わせて、会話をしてくれたら、それで。




……分かってる。

彼は世間を騒がせる人気歌い手であって。

ネットの世界に飛び込めば、
彼のことをよく知る人たちはそこら中にいて。


私が独占するなんて無理なくらい、愛されていて、忙しいんだって、分かってるけど。



せめて、素顔の時だけは、貴方を独り占めしたいの。



――――やっぱり、駄目なのかな。
こんな一方的な願望、そらるさんを困らせるだけ、か。



真剣な顔つきで作業に取り組む彼に、「ごめんね」と、ぽつり呟いた。


瞬間、とてつもない不安が込み上げてくる。



そらるさんは、本当に私のことが好きなのだろうか？

思えば、
今まで一度も、「好き」って言ってくれたことなんてなかった――――。



……当たり前か。こんな我儘で欲張りな女、

誰が好きになるっていうんだ。





ぴこんっ。

「あ、まふくんからだ」
ふわふわのソファに寝転がって、スマホを操作する。



『明日遊びに行かない？』


まふくんからの誘いは結構唐突だ。
でも、同性みたいに仲良くしてくれているのは嬉しい。


『おけ！ どんなとこ？』そこで一旦送信し、
『そらるさん構ってくれない寂しい』と、まふてるが泣いているスタンプを送る。



そんな風にまふくんとやり取りしながら笑っていると、「ねえ」と頭上から声が聞こえた。



「何笑ってんの」
そう、いつの間にかすぐ近くまで来ていた彼は、不満げに私を見下ろす。


「え、まふくんからLINEきて、明日遊び行こうって」
「駄目」


駄目？
なんで、今までそんなこと言わなかったのに。



そらるさんはその透き通った目をそっと伏せ、



「……俺のYOUでしょ」

と、耳を赤くさせて、言った。



何、それ。
「妬いてくれてたの……？」


そう訊くと、彼は恥ずかしそうにそっぽを向く。
嬉しくて、思わずその大きな背中に抱きついた。


「そらるさん、大好きっ」
「……俺も」


小さく、でもはっきりと、そらるさんは口にする。


私がずっと望んでいた言葉を、初めて。





「YOUのこと、大好き」

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