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「___えっ」
思わず声が漏れた
すかさず中也が肘で小突いてきたけど、いやいやこれは不可抗力だ
「手前がペラペラ、恋人は居ねえだの何だの喋るからだろうが」
低く響く中也の声が、そっと耳打ち
あー、はいはい、成る程
" 恋人 " って嘘が使えないので、代打で " 夫婦 " なんて法螺を吹いた、っていう訳か
………うん?
「ふ、ふふふ、夫婦…!?」
漢字で書けばたった二文字のその単語に頭はパニック寸前、フリーズ間際
相反して、忙しなく高鳴り始める心臓
ちょっと待って欲しい、急過ぎる夫婦展開に私は全く付いて行けてない
こんなの、山田さんも疑うんじゃ___
「おや、そうでしたか! そう云えば確かに、お二人ともナカハラの姓でしたねえ」
___一ミリも疑らずに信じなさった
この状況に置いてけぼりにされてるのは、もしや私だけなのだろうか
火照ってくる顔に手を当てて冷やす、その手も熱を持ってるのに気付かないで
「これは悪い事をした、人妻に手を出してしまう所でした」
「___んじゃあ」
中也の呟きと共に、視界が反転して、揺れるドレスと支えられた体
見上げた目の前には中也の端正な横顔がある
所謂、お姫様抱っこと云うやつだ
中也は私を、全く以て余裕そうに、軽々と姫抱きにしてくれちゃっていた
「___Aは連れて行くぜ」
二人、夜風の下のバルコニーにて
奥の方へ足を進める中也は未だ私を抱きかかえたままであり、私の肺が中也の香りで一杯になって、それが何故かやけに安心をもたらした
「悪かったな」
え、と聞き返せば、少し苛立たしげな中也
「本当はよ、一人目の男が手前にちょっかい掛けてやがった時から、手前の姿は見えてたんだが」
人混みの所為でなかなか辿り着けなかった、と
いつもより覇気のない、溜め息混じりの暗い声
中也の蒼い瞳も儚げに揺れていて
「別に、大丈夫だし」
ツンと突っぱねて云い返した
けれど
「嘘吐け、手、震えてんじゃねえか」
視線を落とされた私の手は中也の云う通り、頼りなく小さく怯えていた
自分で思ってたより、チャラ男も山田さんも、嫌で怖かったのかもしれない
この怯えを消し去るには、一体どうすりゃ良いもんか、って考えることコンマ数秒
「____中也、手、握って欲しい」
ものの一瞬で閃いたのは、そんな答えだった
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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