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「はい出来たよ」と声がかかり、私は目を覚ました。美味しそうなスープが作ってある。


「……ありがとう、ございます」


「あーんしてあげよっか?」


「遠慮させていただきます…」


ベッドからおりて、机に向かえばわざわざ近寄ってコケないようにしてくださる五条さん。優しいなぁなんて思いながら感謝を言い、椅子に座った。

風邪なんて久しぶりに引いたから、この感覚に慣れていない。とは言え、辛すぎるかと聞かれると大袈裟な気もする。

スプーンでスープを掬って、口に入れた。鼻が詰まっているから味が分かりずらい。


「五条さん…」


「何?」


「このスープ、風邪が治ってから食べたいです…残しておいてもらっても、いいですか?」


五条さんはキョトンとして、それから「ククク…」と笑った。


「また作るよ。出来たてを食べる権利が君にはある」


「そんなの、申し訳ないです」


「じゃあ僕からお願いだ。味が分かる時に感想を伝えてちょーだい」


この人は、本当に、生ぬるい程優しい。頬杖をつく姿でさえ様になるその顔を眺めて、ありがとうございますと言った。

私が食べ終えた頃、五条さんが「あぁそうだ」と付け足すようにポケットから何かを出す。

それは、小さな箱だった。


「ほら、この前机に置いてあったでしょ?渡しそびれたから」


中には、指輪が入っていた。確かに机に置いてあった気がする。

左手を持たれて、薬指に輪が通った。なんて素敵なものなんだろう。


「ありがとうございます…」


「…ははっ、泣くほど嬉しい?」


「っはい、泣くつもりはなかったんですけど……つい…」


目の前がぼやけて見えない。もしかしたら、風邪で涙腺が崩壊しているのかもしれない。なんだか恥ずかしい。


「体調悪い時にこんな事言うのもごめんだけど、何処か行く時もつけてね」


「はい、勿論です…」


この日々が壊れないで欲しい。五条さんはそうやってまた、死にたくない理由を作る。

仕事が億劫にならないようにしなくちゃ。

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作者 - 緑の白猫さん» ありがとうございます!少しおかしい幸せな恋愛を目指しているので、そう言って下さり嬉しいです! (2021年3月3日 23時) (レス) id: abf4ad4153 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - 唯でさえ五条さんがヤンデレ気味なのに、夢主ちゃんもちょっと変な娘で、其れなのに純愛っぽく成立している所が、読んでいて堪らなく好きです。更新は無理せず頑張って下さい! (2021年3月3日 20時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2021年3月3日 0時

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