呪術廻戦〜貳爪探し〜

殺すか祓うか ページ47

どしゃ降りの雨の中

私はうずくまって眠っていた

どれくらい眠ったのかなんて分かりゃしない

幸いなことに人通りはまるでなく､誰かに絡まれるということもなかった

ふと､目が覚める

身体中がギシギシときしんだ感覚

掌は小刻みに震えていた

9月といえど､秋へと移ろいつつあるこの季節…

降りしきる雨はは冷えきり､私の身体は限界を迎えていた

その時､車の眩しいライトが此方に走ってきた

私はゆっくりと立ち上がり､その車を見つめる

黒塗りのタクシー

そのタクシーは私の前に止まって後部座席の扉が開かれた

「…あら 貴方は…」

背が縮みきった…優しげな雰囲気のする老夫婦

由梨の義両親…

「どうしたんだい こんな雨の中…」

由梨が生きていた時と同様に…2人とも､痛くなるほど優しい

『…お久しぶりです 由梨の葬儀にも顔を出さずに…申し訳ございませんでした』

真っ先に私は深々と頭を下げた

「まぁまぁ､そんな…」

「その格好じゃ風邪を引く さ､中に…」

2人は､見るからに値段の張りそうな傘を私に差し出す

私はその優しさに､吐き出しそうなほど苦しくなった

お前が悪い

全部お前のせいだ

死ぬのが由梨じゃなくて､私ならば…！

…そうでも言われなければ､私は…私を赦せない

『…由梨が死んだのは私のせいです …許されるなんて到底思っていません でも､今の私には…こうすることしか出来ません』

私は､更に深く頭を下げる

2人は少し目を見合わせた後､私にニッコリと笑いかけた

「…貴方は悪くないわ 分かっているもの 警察の方には貴方の虐めがどうとかって言われたけれど…私達はこれっぽっちも信じていないわ」

…お願い

「あの子はいつも…楽しそうに貴方の話をしていたわ 貴方が遊びに来ると私もこんな年でも楽しかったわ…」

やめて

「貴方は…いえ､Aちゃんは私達の家族も同然よ 本当の孫のように思ってるわ…」


…刹那

私の中で何かが完全に壊れた気がした

私はこの2人に何を求めていた？

赦し？

…否

問責？

…否

…そうか

私は､私を祓い(殺し)たいんだ

とことん追い詰め…そうだな まずは心から殺すつもりだった

心は幾らでも殺せる…

私自身､既に呪いだったんだ

いつからだろうね

…さぁ､知らない

カタカタと､全身の震えを抑えきれなくなる

「…あらいけない！今すぐ身体を温めないと」

そう言って手を差し伸ばされる

私はそれを振り払って走り出した

私を呼び止める声も…雨にかき消されていった

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