倦厭 ページ42
私は山を早足で下りる
気づけば…後ろに狗巻先輩はいなかった
屋敷に置いてきてしまったのだろう
…だからと言って戻るほどの気力も…もう残ってはいなかった
ゴロゴロゴロ…
雲行きが怪しい
遠くの空で真っ黒な雲が不穏な音で鳴いている
破れた金網を抜け、私は人通りのまるでない道に出る
気に入っていた靴も山道のせいで泥々だ
「…あっれ〜?Aちゃんまだいたの〜??」
道を歩いていると、先程聞いたばかりの胸糞悪い声が耳に入る
…迂闊だった まだ帰っていなかったのか
「…?ねぇ、アンタの先輩とか言ってた人は?」
「え?ナニナニ喧嘩?」
『…さぁ』
私は蟲達の声を無視して先を行こうとする
しかし、そう簡単に逃がしてくれる訳もなく私は手首を掴まれた
無駄に着飾った魔女のような長い爪が刺さり、血が流れる
「シカトしてんじゃねえよ お前自分の立場分かってんの?」
狗巻先輩がいないということが分かると、あからさまに態度を変える
本当に分かりやすい…
「…何、お前足めちゃ汚ねえじゃん 山行ったの?」
「え、もしかして由梨が死んだとこに?!うっわ〜犯人は現場に戻るって言うしね!」
「うわガチじゃん」
嘲笑うように蟲達はゲラゲラと醜く笑う
私は怒りが起きることもなく無言で蟲の手を引き剥がす
その流れのまま後ろへと突き飛ばして一目散に走り去った
「は?!おい!」
「いったぁ…!」
追いかけてくる気配はない
勿論追われても、蟲達のように鈍りきった足じゃ到底追いつかれる訳もない
私は伊地知さんが待つ車が停まっている場所とは真逆の方角へ走った
…行かなければならない所があったから
〜狗巻side〜
泥濘に足を取られながら、自分は道の悪い山を走っていた
足の速さには自信がある方
なのに全く追いつけない
若しかすると途中気づかなかっただけで、追い抜かしてしまったかもしれない、とも感じた
やっとの思いで山を下りると、行きと同じ金網をくぐる
辺りを見回しても誰もいない
伊地知さんの車に戻った…のか?
出来ればそうであってほしいと思いながら、道を走る
角を曲がり、自分は良くない事態に気づいて謎の疲れが溢れ出した
屋敷に来る前に絡まれた あの女子達が、まだそこにいる
土地勘のない場所だったので完全に忘れていた
どうやら、1人が怪我をしたらしく他の女子達がその1人を囲んで騒いでいる
丁度いい 遠回りしてバレないようにしよう
「あ!Aの先輩サンじゃん!」
……
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セイ - コメントありがとうございます!前述した通り、私文章を賞賛されることがすっごく嬉しいです…!これからも読んで下されば幸いです (2021年3月8日 23時) (レス) id: 8e72f4c5b9 (このIDを非表示/違反報告)
庭にワニ - この作品がすごく好きです!表現から使う言葉からとても小説然としていて、もっとたくさん貴方の文が読みたくなりました。応援しています。 (2021年3月8日 14時) (レス) id: b2acb73c6a (このIDを非表示/違反報告)
セイ - 狗巻先輩推しなのバレちゃいましたか…えへ文章力で褒められるの少ないのですごい嬉しいです ありがとうございます (2021年3月2日 23時) (レス) id: 8e72f4c5b9 (このIDを非表示/違反報告)
ロビン - 最近の更新で主様が狗巻推しなのめっちゃ伝わる、、笑これって狗巻と夢主ちゃんがくっつくENDってありますか??いつも更新ありがとうございます!主様の表現の仕方で場面の状況が簡単に想像できるの本当にすごいです、、、 (2021年2月28日 23時) (レス) id: 955356ab25 (このIDを非表示/違反報告)
セイ - 待って待って自分がめちゃくちゃ考えた所アッサリバレてるの恥ずかしすぎる…もっと難しくしよう… (2021年1月31日 23時) (レス) id: 8e72f4c5b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セイ | 作成日時:2021年1月15日 3時