黒バス 短編集 【オレンジ】

【手作りお菓子】 紫原敦 奏海sリク ページ16

彼はお菓子が大好きで、僕はお菓子を作ることが大好き。

僕はそんな彼が美味しそうに僕が作ったお菓子を食べる姿が好き。

ううん、全てにおいて彼が好きなんだ。


早朝の体育館に、僕は早足で向かう。

「紫原、例のアレ持ってきたけど？」

体育館で朝早くから練習している選手達の中から

僕は一際目立つ紫原を見つけた。

「ホントに〜？」

僕に近付いてくる紫原はまるで犬が尻尾を振っているみたいに嬉しそうだ。

「ん、頼まれてたカップケーキ。」

紫原に少し大きめの紙つづみを渡す。

中身は、プレーン、チョコ、あとはレモン味のカップケーキが２つずつ。

「少なくない〜？」

「材料がなかったんだから、我慢してくれよ。」

ね？と、僕は紫原に笑いかける。

「今度は、いっぱいじゃないと怒るよ？」

紫原の言ういっぱいがどれくらいなのか予想もつかない。

現にいつもお菓子を腕いっぱいに抱えているのに

僕にお菓子を作らせる時点で可笑しいと思う。

まぁ、僕的には話すきっかけが出来るから嬉しいのだけど…。

「分かった、分かった。」

OKサインを出し、僕は踵を返して出口に向かう。

「今度はいっぱい作ってくるから！」

「A〜。」

出口まであと１歩というところで紫原が僕の名前を呼ぶ。

「何？」

「好きだよ〜。Aのお菓子も。」

僕のことじゃないのに、お菓子が好きって言っただけなのに、

僕の頬は紅くなって、つい笑みが零れた。

「お世辞は止めてよね？」

手作りお菓子

好きな君が作ったお菓子だから、大好きなんだけど〜。


(…何か勘違いされたかも〜。)

(あれは紫原が悪いよ。)

(室ちん、盗み聞きはよくないよ〜。)

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